74.国王、悪魔王の力を手に入れる
魔王ジークが不死者たちの呪いを解いた、一方その頃。
東の果ての島には、岩を削って作られた巨大な城があった。
【鬼岩城】
悪魔達がそう呼ぶ城に、鬼の精鋭部隊達が、今まさに乗り込んでいた。
「もうすぐ親玉の部屋だ……みんな、気を抜くな……」
精鋭部隊のリーダーが部下達に言う。
ここへ来るまでの戦闘で、多くの鬼達が命を失っていた。
みな、悪魔の強さは重々理解している。
それでも鬼たちの平和のために、命を賭してここへやってきているのだ。
リーダー達一行は、城の最奥へと到着する。
「くくく……よく来たなぁ、蛮族ども」
「おまえが悪魔王メフィスト・フェレスだな!」
玉座に深々と座るのは、メフィストという名の悪魔では……なかった。
「ちと違う。わしは大悪魔メフィストを身に宿した王……悪魔王2世だ!」
そこにいたのは、ジークのよく知る男、国王だった。
しおれていた体には活力が戻り、年の頃も40くらいにまで若返っている。
「くっ……! なんて、プレッシャーだ……!」
鬼の精鋭部隊は、Sランクモンスターを容易く倒すだけの実力者たちで形成されている。
彼らを以てしても、国王が放つプレッシャーに耐えきれない様子であった。
「みな! 奮い立て! 故郷のために! 同胞のために剣を抜け!」
「「「うぉおおおおおおお!」」」
雄叫びを上げながら、鬼達が立ち上がって突撃する。
だが次の瞬間、体がバラバラになって倒れた。
「くく……くかかかっ! 弱い! 弱すぎるんだよぉおおおおお!」
邪悪な笑みを浮かべて、国王が天を仰ぎ見る。
「くそっ! なんて力だ……! だが……あきらめない!」
「「「リーダー!」」」
口に刀をくわえ、地面を転がりながら駆ける。
飛び上がって、リーダーが刀を、国王の首に振る。
がきぃん! と硬い物同士がぶつかり合う音がする。
「なっ!? なんて硬いんだ!」
「今のわしはなぁ! 昔の貧弱な老体ではなぁい!」
国王は指でペシッ、とリーダーを弾く。
「ぐわぁああああああああ!」
精鋭部隊のリーダーはまるで木の葉のように飛んでいき、壁に激突。
「凄い……やはり悪魔の力は最高だ! ふはっ! ふははははは!」
「や、やばいって……勝てっこない」「復活したんだ。悪魔王が……くそっ! もうおしまいだ!」
絶望の表情を浮かべる鬼達を見下ろし、国王は愉悦の表情を浮かべる。
「そうそう、それだよぉ~。わしがのぞんでいたのは、わしを畏怖するその目がほしかったのだよぉ~」
くかかっ、と国王は高笑いする。
「絶好調のようですなぁ、国王殿」
「おおっ! ジャマーではないか!」
背後に控えていたのは、かつてジークが倒したはずの魔王軍指揮官ジャマーだった。
「貴様には、感謝してやっても良い。わしにこの力を与えたのだからなぁ!」
「いやしかし見事でございます。悪魔の力を受け止めるには【器】が必要。封印されていた悪魔王の力をその身に宿すとは、いやはや、さすがは一国の王」
「そうだぁ! わしは王! 王なのだぁ! 悪魔を率いて今までわしをバカにしてきた奴らに、復讐してやるぅう!」
国王の体から黒いもやが吹き出す。
それを見てジャマーは「……バカなやつめ」と蔑んだ目を向けている。
だが国王はジャマーを信頼していた。
……利用されているだけとは知らずに。
「ところで国王殿、この島国にジークが来ているようですぞ」
「なにぃー! ほんとうかぁ……!」
国王は悪魔のように口の端をつり上げて高笑いする。
「ええ。なんでも鬼を救うために、悪魔王たるあなたを倒しに来るとか」
「よい、よいぞぉ! ジークぅ! ははっ! 身の程知らずがぁ! 返り討ちにしてやるぅうううう!」
「倒す自信がおありで? 相手は最強の魔王ですぞ?」
「だからなんだ! 今のわしは悪魔王の力を宿した無敵の存在! 獣係なんぞに絶対に負けるわけがなぁい!」
国王は立ち上がって、手を叩く。
大悪魔達が国王の前に現れる。
「者ども! ジークをここへ連れてこい! だが決して殺すことを許さん! 生け捕りにするのだ!」
国王は、悪魔達ですらジークを凌駕していると思っている様子。
「けどよぉ、悪魔王さんよぉ。殺してもかまわんのだろぉ?」
「たかが脆弱な人間ごとき、殺すのはたやすいが、生け捕りは逆に難しいなぁ」
大悪魔たちもまた、自分たちが負けることなど微塵も思っていないようだった。
「ふざけるなボケがぁ!」
国王が怒気を飛ばすと、悪魔たちはその場に倒れ伏す。
「このわしが直々に始末するんだよぉ! おまえら下っ端は、わしの言うことを素直に聞いておればよい!三下どもがぁ!」
「ケッ……! 借り物の力で王になったくせに、何を偉そうに……ふぎゃっ!」
口答えした悪魔をひねり潰し、国王が言う。
「さっさと行けバカどもが。この悪魔王たるわしの気が変わらんうちになぁ~」
と、そのときだった。
どがぁんっ! と城の壁が爆発した。
現れたのは、見慣れた青年……ジークだった。
「ジークぅうう!」
国王が歓喜の笑みを浮かべる。
一方で悪魔達は動揺していた。
「ば、バカな……ここには強力な結界にトラップ、悪魔たちが防衛していたはず……!」
大悪魔が何かをつぶやいているが、関係ない。
国王はタンッ……! と地面を蹴ってジークに高速接近。
「ははぁっ! 自ら殺されに来るとは殊勝なやつだなぁ! 大人しく死ねぇええええ!」
バキッ……!
「ふげぇえええええええええええ!」
ジークに殴り飛ばされ、国王は無様に吹っ飛ぶ。
「ば、ばかなぁ!? なにを、されたのだっ!」
魔王は冷静に、倒れ伏す鬼の精鋭部隊を見やる。
そして、静かにつぶやいた。
「殺す」
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