73.不死者の呪いを解く
ゾンビの軍勢を退けた。
だが元凶たる悪魔たちを倒さない限り、根本的な解決にはならない。
しかしサクラの兄を含め、鬼達は悪魔の拠点を知らないという。
居場所を特定するためには、人員を割かないとな……と思っていたちょうどそのときだ。
『あにきー! 大変っす! なんかやべーやつらが城の前に集まってるっすよー!』
城から見下ろすと、そこにいたのは……腐った体を持った化け物達だ。
「ぞ、ゾンビかっ魔王殿!?」
「いや、ちょっと様子がおかしい……鬼達じゃあないんだよな?」
眼下の化け物達には角が生えていない。
なら鬼が悪魔の手によってゾンビになったものではない、ということだ。
化け物集団の先頭に、金髪の麗しい女性が現れる。
「聞け! われら不死者は戦に来たわけでない! ここに魔王がいると聞いて参上した!」
……どうやら敵ではなさそうだ。
「われらの頼みを聞いてはくれないだろうかっ?」
『あにき~どうします~?』
火竜が心配そうに俺を見上げてくる。
「いくよ。相手が誰であれ、困っている人は見過ごせない」
『さっすがあにきっす! おれたちのたよれる魔王様っすー!』
俺は単独で城の外へ向かい、女性の前に立つ。
「突然の来訪、申し訳ない。私は【不死王】カーミラ。この不死者たちの長をしているもの」
カーミラは長身で金髪、そして血のように赤い眼をしていた。
口から覗く鋭い牙が特徴的だ。
「吸血鬼、ってやつか」
「然り。私はそうだが、他の者たちは屍鬼など、不死の呪いにより死ねなくなったものたちなのだ」
「不死の呪い……か」
確かに彼らからはまがまがしいオーラを感じる。
「悪魔から受けた呪いなのか?」
「然り。【悪魔王メフィスト・フェレス】が封印される前に、不死の呪いを受けたものたちだ」
悪魔王。
また新しい単語が出てきたな。
それが今暴れている悪魔達の親玉なのか?
でも封印って言っていたし……。
いや、それよりもだ。
「おまえたちは悪魔の味方か?」
「断じて違う。我らは被害者だ。やつらのせいで死ねない体となって幾星霜……」
つつ……とカーミラ達が涙を流す。
「あなた様ほどの強い力をお持ちならば、不死者とて殺すことができるやもしれない……魔王殿、お願いがある。我らを……殺して欲しい」
不死者達が悲嘆に暮れた表情で俺を見やる。
「そんな悲しいこと言うなよ」
「しかし……」
「俺に任せてくれ。呪いを解いてみせる」
カーミラが目を丸くする。
「ま、魔王殿……それは、無理だ。悪魔王のかけた強力な呪い。今まで長い時間かけて解呪の方法を探したが、どれも失敗に終わったのだぞ」
「たしかに呪いのことはよくわからない。が……救いを求めてやってきた命を、この手で殺すことなんて絶対にしない。俺は医師だからな」
俺はカーミラの涙を指で拭う。
「頼む、俺を信じて欲しい」
「…………わかりました。魔王殿を信じます。みなも、あなたに体を差し上げます」
うなずいて、不死者たちが俺の前に整列する。
神の手を発動させる。
あらゆる状態異常を治し、さらにゾンビ化の呪いすら解いたのだ。
俺には、呪いを解くだけの力がある。
俺の両手からまばゆい光が発生する。
不死者達の体を柔らかな光が包み込む。
彼らの影から、何か黒い靄のようなものが立ち上った。
『おのれ! よくも不死の悪魔たるこの』
「黙れ」
俺は聖なる光をより強く発生させる。
靄の正体はどうやら悪魔みたいだったのだが、一瞬で消し飛ばした。
「あ、悪魔を一撃で倒すなんて! あ、あなた様はいったい……!?」
「俺はジーク。魔王で、獣たちの医師だ」
光が収まる。
カーミラ達は自分たちの両手を見やる。
彼女は指の腹を、がりっ、と咬む。
血がじわ……とにじむ。
「痛い……傷が、なおらない……やった……やった!」
うぉお! と不死者たちが歓声を上げる。
「ありがとう! ありがとう魔王様!」
カーミラは俺に抱きついて、滂沱の涙を流す。
「あなた様には感謝しても仕切れません! このご恩、一生忘れません!」
不死者たちはみんな笑っていた。
俺は満足だった。
「カーミラ。悪魔王の呪いを受けたってことは、悪魔たちの拠点、わかるか?」
「ええ、もちろん。ま、まさか……」
「ああ。悪魔王を倒して、みんなを救う」
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