71.鬼の城、ゾンビ軍団
夕方になって、俺たちはサクラの住んでいた城へとやってきた。
5つに皿が重なっているような独特な作りの城が、鬼族の頭首の城らしい。
「むごい……」
城の周りには、大量の死体が放置されていた。
死体は腐り、カラスがついばんでいる。
「みな、悪魔と戦い命を落としたものたちです。埋葬してあげたいのですが……夜になると悪魔軍がせめてくるので……」
鬼の姫サクラが、悲しそうに顔をうつむかせる。
「あとでちゃんと弔ってやろうな」
「……はいっ」
俺は城の最上階にいるという、サクラの兄のもとへとやってきた。
「兄上! ただいま戻りました!」
「おお! サクラ! よく戻った!」
鬼族の現頭首、サクラの兄が妹を抱きしめる。
俺は軽く自己紹介をし、援軍としてやってきたことを説明する。
「魔王殿、遠いところわざわざご足労、誠に感謝する」
「気にするな。困ったときはお互い様だ」
「おお……なんと優しいお方だ……現魔王がここまで人のできたお方だったとは……」
「お、大げさだな……。ところで、状況は?」
サクラ兄から、現状を説明してもらう。
裏切った家臣は悪魔と手を組み、大群を用いて攻めてきている。
残された鬼達はこの城にこもって籠城戦をしていた。
悪魔は日中は活動できないらしい。
しかし物量で押されているため、じり貧だったそうだ。
「なるほど、まずは負傷者の治療からだな」
俺はサクラの兄に連れられ、負傷者の下とへ向かう。
傷付いた鬼達が布団の上に寝かされ、うなされていた。
俺は血液を採取して鑑定する。
「これは……見たことない毒だな」
「悪魔達の使う武器には、【呪毒】という強力な毒の呪いが込められているのです。かすり傷を負うだけで、数日後にはみな……」
俺は【神の眼】で成分を分析。
「よし、今から治療する」
「ち、治療? しかし魔王殿、悪魔の呪毒は解毒薬でも治癒術でも決して治せませぬぞ?」
俺は両手を広げて、【神の手】を発動。
傷を癒し、欠損した部位を生やし、そして呪いを解く。
「う、うそぉ! な、治ってる!」
「腕が! 戻った!」
「体が動く! すごい! もうへっちゃらだ!」
ワッ……! と鬼達が歓声を上げる。
「なんと……呪われし毒をといてしまうなんて。魔王殿は神の代行者なのでしょうか……?」
「そんなたいそうな人間じゃないよ」
そのときだった。
「夜です! 【やつら】が起き上がりました!」
俺はサクラ兄とともに、最上階へと上る。
外の様子を見やると、大量の死体達が動き出した。
「あれも悪魔の呪いです。ゾンビといって、死後もああして動いては、生きてる者をまたゾンビへと変えてしまうです」
「……ひでえことしやがる」
鬼達からすれば、敵はもと同胞。
戦意をそがれるし、そのすきをつかれ殺され、また新たなゾンビを生む。
「正直……もう手詰まりなのです。火で焼き払うしか……」
「いや、大丈夫だ。肉体があるなら、蘇生ができる」
「そ、蘇生……? いや、いくらなんでもそれは……」
俺は城下に向けて手を伸ばす。
神の手を最大出力で発動。
神聖なる光が周囲を包み込む。
ゾンビ達は立ち止まる。
腐っていた肉が元に戻り、呪いを除去し、そこに元の魂が戻る。
「な、なんということだ! み、皆が元に戻っている!」
ゾンビに変えられていた鬼達が、眼下で感涙にむせていた。
「魔王殿! ありがとう! 本当の本当にありがとう!」
良かった、これで悲しい思いをせずにすんで……。
「しかしゾンビの呪いとか、えげつないことしやがる。呪いをかけた悪魔を倒さないとな。どこのどいつだ?」
「わかりません。数ヶ月前に悪魔の軍勢が現れ、自らを【王】と自称しておりました。……ああ、そう言えば【ジークを殺す】と頻繁につぶやいていたそうですが……お知り合いでしょうか?」
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