07.手負いのハーピィ
俺は獣人国に出立する前に、知り合いの牧場を訪れていた。
「あんたがいなくなると牛たちも寂しがるよ」
牛農家のおっちゃんが、寂しそうな顔で言う。
「そう言ってもらえると嬉しいよ。じゃ、管理の仕方はレポートにまとめておいたから。わかんないことあったら手紙くれな」
俺は牛たちの管理方法をまとめたファイルを、おっちゃんに手渡す。
「ここまで丁寧に見てくれるお医者さんはおめえさんしかいねえよぅ。国もバカだねぇ。こんな素晴らしい人材放り出すなんて」
「ありがとな。じゃあおっちゃん、達者で」
牧場をあとにした俺たちは、草原地帯を歩いていた。
そのときだった。
「ん? ……なんか倒れてるな」
背の高い草の茂みに、何かがへたり込んでいる。
俺たちがそこへ向かうと、女型の鳥人間がいた。
「【ハーピィ】か」
「じ、ジーク様! おさがりください!Aランクの凶暴な魔獣です!」
騎士のミントが剣を抜こうとしたので、俺はそれを制する。
「やめとけ。手負いだ」
「ゲゲゲー!!!!」
ハーピィは興奮したのか、俺に向かって襲いかかってくる。
高速で飛び上がって、鉤爪で攻撃してくる。
ガシッ……! と鉤爪を掴む。
「す、すごい! あの素早い攻撃を受け止めるなんて!」
「【眠り】」
スキルを発動させると、ハーピィはすぐにその場で倒れた。
「足の骨が折れてるな」
「な、なぜわかるのですか?」
「え、骨折程度の怪我なら触診で一発でわかるだろ? ちーちゃん、治療キットもってきて」
「ぐわー!」
地竜の背に乗せていた道具を使って、手早く治療する。
「……触れただけで怪我なんてわかりませんよ。やはり、素晴らしい人材です」
『そー! おにーちゃんは素晴らしいのです! さっすがー!』
ほどなくして、俺は応急処置を終える。
足に包帯を巻いたハーピィが、安らかな寝息を立てている。
「後は魔獣の高い自然治癒能力ですぐ元通りになるだろう。いくか」
「この娘は置いて行かれるのですか?」
「ああ。相手は野生の魔獣だぞ? 起きたらまたすぐ襲ってくるに決まってる」
魔獣は魔王の呪いがかかっており、人を襲うように操られているからな。
「呪いを解く方法はないのですか? 聞けばジーク様は国の魔獣を手懐けていたとか。地竜の例もありますし」
「ある、が魔獣を手懐けるには年単位の長い時間をかけて、ゆっくりと呪いを解く以外に方法はない」
と、そのときだった。
『あ、ハーピィおきたよー!』
「マジかよ。駄弁りすぎたな」
急いで逃げようとした、そのときだった。
「…………」
ハーピィは、襲ってこなかった。
ジッ、と俺を見ている。
「え? え? なんで襲ってこないの?」
こちらに近づいてくると、俺の胸に頬ずりしてきた。
『助けてくれてありがとなのね♡ 優しくしてくれるあなた、大好きなのね♡』
「………へ? しゃ、しゃべった!? 神獣でもないのに!?」
ハーピィは目に♡を浮かべて、がばっと抱きついてくる。
「さすがですジーク様。高位魔獣にかかった呪いを一発で解呪してみせるとは!」
「か、解呪? いやいやいや! そんな力俺にはないって!」
ミントは不思議そうな顔で言う。
「もしやジーク様。神獣様と契約し、力を得て進化なさったこと……自覚なさってないのですか?」
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