69.鬼の姫様
ある日のこと。
火竜からの報告で、森の中にケガ人を見つけたという。
俺が現場へと向かうと、血だらけで倒れている女の子たちがいた。
銀髪の長い髪を、ポニーテールにしている女性。
もうひとりは赤い髪の女の子。
「だ、大丈夫か?」
「無礼者! このお方に触るな!」
銀髪の女性が剣を抜いて、俺に構える。
どうやら赤髪の子の護衛のようだ。
「落ち着け。俺はおまえに危害を加える気はない。俺はジーク、一応魔王やっている」
「魔王……だと? 嘘をつくな! なぜ人間が魔王をする!?」
いやまったくそうだよな。
色々あったとしか言い様がない。
「俺は医者でもある。見たところあんたらケガしてるじゃないか。治療させてくれ」
特に女の子のほうは衰弱しているようだ。
「姫に触るな!」
「姫……?」
と、そこで俺は気づいた。
彼女たちは、人間ではない。
額に角が生えている……鬼?
東方の国に住むという亜人間のことだ。
「何で鬼がここに……?」
「ゆえあって、ここに住むという魔王殿に会いに来たのだ!」
「俺に?」
「だから、おまえではない!」
どうやら魔王と認識されていない様子だった。
「姫には手を出させん!」
ぎんっ、と彼女の目が赤く輝く。
「せやぁあああああ!」
高速で移動してくると、銀髪剣士は俺に斬りかかる。
俺は特に反撃もせず、両手を下げる。
ビタッ、と彼女が剣を寸前で止める。
「なぜ避けない!」
「あんたからは殺気を感じなかったからな。それに、峰打ちでどうやって人を殺すって言うんだよ」
「そ、それは……」
俺は彼女の手に触れる。
治癒術を発動させると、銀髪女性の体の傷が治った。
「き、傷が一瞬で!? い、今のは、いったい……」
そのときだ。
『魔王様ー!』
バサリッ、と火竜たちが俺の前に降り立つ。
「か、火竜!? しかもこ、こんなに大勢!? に、逃げろ!」
「あー、心配ないって。身内だ」
俺は火竜に近づき、よしよしと頭をなでる。
『魔王様! ご無事ですかぁい!』
「今度は人狼だと!?」
牧場が近くだったので、こぼる太たち人狼も心配して駆けつけてきた。
「な、なんなのだ……さっきから。魔王魔王って。魔王はどこにいるのだ!?」
「だから、俺がそうなんだってば」
愕然とする彼女をよそに、俺は倒れている赤髪の女の子のそばにしゃがみ込む。
「姫様に触るな!」
「この子、生まれつき足が悪くて、歩けないんじゃないか?」
「!? な、なぜそれを!?」
「言ったろ。俺は魔王で、医者だからさ」
先天的な筋肉の異常だろうな。
足が異常に細い。
「ここまで負ぶってきたのか。大変だったなおまえも」
俺は女の子に、【神の手】を使用する。
赤髪の子の傷はすぐに治る。
「うう……ここは……?」
「姫様! ご無事でございましたか!」
姫は目を覚まし、銀髪の女性を見てうなずく。
「調子はどうだ?」
「あ、あなた様が治療を……?」
「ああ。歩けるか?」
「いえ……わたしは……その……」
「足が動かなかったんだろ? ついでに治してみたんだ。立てるか?」
俺が言うと、姫は目を丸くする。
「そ、そんなバカなことがあり得るわけないだろ!」
姫は戸惑いながら、力を込めて立ち上がる。
「た、立ってる! 立っているわ、わたし!」
「姫様!」
ふたりが目を剥いている。
「ありがとう……お医者様、いえ、魔王様」
姫が俺に近づくと、手を握る。
「魔王様。そのお力を見込んで頼みたいことがあります」
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