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68.皇帝との交渉



 俺は神聖皇国までやってきていた。


 この国を治めている皇帝に謁見し、交渉を申し出ていた。


 謁見の間にて。


「ふむ……貴様の要求は、つまり我らと【不可侵条約】を結びたい、ということか?」


「その通りだ。ゴミィディス皇帝。お互い不干渉ってことにしてほしい。飲んでくれるなら騎士を率いて攻めてきたことは不問にしてやる」


 ゴミィディス皇帝はフム……と考えたそぶりを見せる。


「却下だな」

「…………なんでだよ」


 がちゃがちゃ、と足を音立てながら、騎士が俺を取り囲む。


「貴様、何様のつもりだ? 畜生どもの親玉風情が、皇帝たる余に不問にしてやる、だと? 分をわきまえよ」


「…………はぁ」


 どうしてこうも上手くいかないんだ……。


「頼む、俺たちはただ平和に暮らしたいだけだ。おまえ達の生活を脅かすつもりはない。それすらも許してくれないのか?」


「無論だ。貴様ら魔物は生きてるだけで悪。目障りなのだよ。なぁ、諸君?」


 皇帝の背後に、13人の騎士達が並び立つ。


「その通りですなぁ陛下!」


 金髪の優男が、俺の前までやってくる。


「なんだよ、おまえは?」

「私は天導近衛騎士団【13使徒】の【アインス】!」


 そう言えばグブツの野郎が、強い騎士がいるとか言っていたな。


「魔獣番風情が、皇帝陛下に命令するなど無礼千万! ここで私が成敗してくれよう」


「アインスよ。手加減はいらん、殺せ」


「……もう一度言う。俺たちにもう関わるな」


「黙れ! 死ねぇええい!」


 アインスは腰から剣を抜こうとする。

 その前に俺は間合いに入る。


「なっ!? は、はや……」

「【麻痺パラライズ】」


 掌底とともにスキルを発動。


「ふぎゃぁああああああああ!」


 アインスは衝撃で体を【く】の字におり、高速で吹き飛ぶ。


 壁に激突し、その場で崩れ落ちる。


「ば、バカな……この、13使徒の私が、まったく、う、動けん……! なんだ……これは……!」


「何をしている! さっさと殺せ!」


 残り12人もその場にドサリ、と倒れた。


「なっ!? 貴様何をしたぁ!?」

「別に、麻痺スキルを広範囲に打ち込んだだけだ」


 アインスに撃ったスキルを、そのまま地面を伝って残り12人にも撃ったのである。


「い、いつの間に……」「われらが感知できぬ技だと……!」「なんという……強さだ……」


 俺を囲んでいた騎士達も崩れ落ちる。


 ひとり、俺は皇帝に向かって歩く。


「も、者ども! なにを寝ぼけている! 立ち上がってこの魔王を殺せ! 殺せぇええ!」


「む、むりです……」「立てません……」


「そ、そんな! 最強の騎士すらも、かなわぬというのか……この化け物に」


 皇帝の前までやってきた。


「ひっ! よ、余を殺したらとんでもないことになるぞぉ!」


「……殺しはしない」


 俺は剣を錬金で作り、皇帝の前に突き刺す。


「ひぃいいいいい!」


 椅子から転げ落ち、怯えた表情で俺を見上げる。


「今回は殺さないでやる。だが次また剣を向けてきたら容赦しない。部下にもお偉いさん達にもちゃんと伝えておけ」


 俺は皇帝を見下ろしていう。


「今度やったら、魔王が国を滅ぼしに来るってな」


「あ……あぁ……あ……」


 がくんっ、と皇帝が恐怖のあまり失神する。


 俺はきびすを返し、転移魔法を使って魔王国へと帰ってくる。


「兄さん」


 妹のチノが、俺を出迎えてくれた。

 抱きついてくる。


「ご無事で何よりです。みんな心配しておりました」


 魔王の間に、魔物達が集まってくる。


「兄さん魔王っぷりが板についてきましたね」


「よしてくれよ。こういうのは苦手なんだ……」


「でも、民のために悪に立ち向かう姿は、紛れもなく魔物達の王。立派です、さすが兄さん」

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★1巻11/15発売★



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「そ、そんな! 最強の騎士すらも、かなわぬというのか……この化け物に」 ⇒「そ、そんな! 最強の騎士すらも、かなわぬというのか……この魔王に」なら分かりますが、はなから"化け物"呼ばわ…
[一言] 一気読みさせて頂きました( *˙ω˙*)و グッ! 魔王になるまでが早くてスピーディー(◍˃̶ᗜ˂̶◍)✩
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