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66.大司教、魔王の恐ろしさに震え上がる



 ゴミィディス皇帝に、魔王国を潰すよう命令された大司教グブツ。


 全騎士団を率いて、魔王ともども、国を滅ぼすために来た……はずだったのだが。


「なんなのだ……これは……」


 魔王国の国境付近にて。

 すすだらけになったグブツは、呆然とつぶやく。


 平原が炎の海に沈んでいた。


「な、なにが……? いったい、何が起きたんだ?」


「だ、大司教ぉおお! お逃げください! 第二波が、来ます!」


 騎士に言われて上空を見やる。


 空に浮かんでいるのは、竜に乗った小柄な男、魔王ジークだ。


 ジークは片手をあげると、空に極大の火炎の球が出現する。


「きょ、極大魔法【煉獄業火球ノヴァ・ストライク】! それを無詠唱で多重展開するだとぉ! ば、化け物かぁ!」


 数え切れないほどの巨大な業火球が、騎士達めがけて振り下ろされる。


 地面に激突した瞬間、激しい爆発があちこちで巻き上がる。


 騎士達は木の葉のように吹っ飛んでいく。

 まるで雑草のように、命を摘み取っていく。


「ま、魔王だ……魔王だぁああああああああああ!」


 それはジークの呼称ではなく、心から出た悲鳴。


 絶対的な力を持った、圧倒的な悪の強者。

 魔王、まさにその名前に恥じぬ力を、ジークは持っていた。 


「う、うわぁあああああああ!」

「大司教! 待ってください! 大司教!」


 騎士達の指揮を放り出し、グブツは泣きわめきながら逃げていく。


「失敗だ! あれは生きる暴力! わたくしはトンデモナイやつの逆鱗に触れてしまったのだぁああああああ!」


 このまま帝国に帰っても、皇帝に殺される。

 この場に居れば魔王に焼き殺される。


 グブツは全てを放り投げて、ひとりで見知らぬ土地で暮らそうと思った。


 ……だが、それを決して許さない。

 魔物達の王は、獣の命を大切にしない存在を、絶対に。


「おい」

「ひ、ひぎぃいいい! ま、魔王ぅううううう!」


 一瞬で魔王が、グブツの前に転移してきたのだ。


「おお、見ただけで転移魔法が模倣できるようになってるな。……さて」


「も、もうしわけございませんぅううううううううう!」


 バッ! とグブツはその場に膝をついて土下座をする。


「わたくしは皇帝陛下に命令され仕方なく! 仕方なく団を率いてここにやってきたのですぅ!」


 悪いのは皇帝、と責任を転嫁する。

 自らの命を最優先として、プライドなんてすぐに投げ捨てる。


「頭上げろ」


「お許しいただけるのですねぇえ……! って、うぎゃぁああああああ! う、腕が! 腕がぁあああ!」


 グブツの両腕がいつの間にかなくなっていた。


「これが欲しいのか?」


 ジークの手には、切り取られた両腕があった。


 だが切断されているというのに、出血も痛みも感じない。


「わ、わたくしをこ、こここ殺すのかぁ! 大勢の団員達と同様にぃ!」


「殺さない。それに、あいつらも死んでない」


「なっ!? ば、バカを言うな! 貴様がみ、皆殺しにしたではないか!」


 燃えさかる大地には、死体となった皇国の騎士達が倒れ伏している。


 ジークは手をかざすと、パァ……! と強烈な光が発生する。


 それは炎を消し、そして瀕死の重傷を負っていたはずの騎士達全員が……起き上がったのだ。


「な、なんだその……馬鹿げた治癒の力はぁ~……」


 今、グブツは本能的に理解した。

 目の前に居るのは、規格外の化け物であると。


 彼の前では、人の命が紙切れのように軽い。


 生かすも殺すも、彼次第。


「もう一度チャンスをくれてやる。仲間を率いて帰れ。そんで、皇帝に伝えろ。俺は和平交渉がしたいと」


 これだけの圧倒的な暴力と奇跡の力を見せつけておいて、和平を望むと魔王は言う。


 グブツは魔王ジークの考えが、理解不可能だった。


「おまえはメッセンジャーだ。皇帝に俺の言葉を正しく伝え、そんでここへ連れてこい。そしたら腕を返す。ちゃんと動かせるようにしてやる」


「ま、誠でございますかぁ……」


「……だが、次また刺客を送り込んできたら、皇国を潰す。いいな?」

 

 ギロッ、と彼がにらみつけると、それだけで失禁してしまった。


「いけ。俺の気が変わらないうちに、とっとと失せろ」

「し、失礼しましたぁぁあああああ!」


 涙を流しながら、生きていることに安堵し……そして、今更ながらジークに楯突いたことを心から後悔した。


「ああ、なんてバカなことを……。捕虜返還の際、大人しくジークの提示した条件を呑んでいれば……」


 だが、もう遅かった。

 皇帝の元へ帰ったとしても、待っているのは……叱責以上のキツい罰であると、彼は理解していたからだ。


「わたくしはなんたる愚物だったのだ……時を戻して、全てをやり直したい……」


【※読者の皆さまへ とても大切なお願い】


「面白い!」

「続きが気になる!」

「もっともっと国王たち『ざまぁ』されろ!」


と思っていただけたら下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に変えて、作品への応援おねがいいたします!


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★1巻11/15発売★



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[一言] 暴虐の魔王ジーク・ヴォルディゴード様…
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