63.VS神に仕える聖なる騎士たち
ある日のこと。
火竜達から、敵が魔物を襲っていると報告があった。
こぼる太たち人狼の居る牧場にて。
「ひゃはは! 殺せ殺せぇ! 魔物は一匹たりとも生かしておくなぁ!」
そこにいたのは、真っ白な鎧に、真っ白なマント。
首から十字に天使の意匠のペンダントをぶら下げた騎士達だ。
騎士の周りには、人狼たちが倒れている。
「ま、おう……さま……」
血だらけのこぼる太が俺に気づく。
「……おまえら、なにやってるんだ」
俺はすぐにこぼる太を治癒し、騎士たちのもとへ行く。
「なんだ貴様?」
「俺はジーク。てめえは?」
「わしは団長の【ノーキン】! われらが正義の行いを、邪魔するというのか?」
「正義……だと?」
ノーキン団長がニィと笑って言う。
「そうだろう! 邪悪なモンスターを倒すのが、われら【神聖皇国】の【天導騎士】の誇りある仕事よ!」
「あ、兄貴……神聖皇国って?」
こぼる太が後ろから聞いてくる。
「……デカい宗教国家だ。天導騎士はそこの国が保有する騎士団で、神とその被造物である人間以外は悪だと切り捨てる、やばいやつらだよ」
人と魔物の国を作ると決めた以上、こういう魔物を平気で傷つける連中との衝突は避けられない。
「警備のゴーレムがいたはずだが、それを壊したのもおまえらか?」
「当然、われらの天導の騎士の行いを邪魔するものは全て悪即斬! だからな。この男もなぁ」
ぐいっ、とノーキン団長が、腕を持ち上げる。
「! おっちゃん!」
「すまねえ……先生……」
おっちゃんはボコボコに殴られていた。
「この不埒ものは、この魔物達を自分の家族だと抜かしやがった! ゆえに制裁を加えてやったのだよぉ」
魔物をかばったから悪、と認定しただと……。
「……ふざけんな」
「はぁ~~~? なんだぁその口の利き方はぁ。おまえもわが天の剣のさびにしてくれようぉかぁ~?」
侮っているノーキンと騎士たちに、俺はにらみつける。
ドンッ……! と騎士達は吹っ飛ぶ。
「ぐわぁああああああああああ!」
素早くおっちゃんに近づき、人狼たちも含めて治療する。
「す、すげえ……魔王様。にらんだだけであの強い騎士達を吹っ飛ばすなんて!」
「でも気をつけてください魔王様! やつら、やばいもん持ってます!」
人狼達を下がらせて、俺はひとり、天導騎士たちと対峙する。
「お、おのれぇ~。貴様! われらを傷つけるとは良い度胸だ!」
「おまえらこそ、うちのもんに手を出すなんて、やられる覚悟はできてるんだろうな?」
がくがく……と騎士達が震え出す。
「さすが魔王様……何もしてないのに、騎士達が怯えています!」
「く、くそっ! おい何を臆している! あんなひ弱そうな男! われら天導の騎士が負けるはずがない! 抜剣!」
ノーキンの命令で、騎士達がいっせいに剣を抜く。
「この剣は天の剣! すなわち、天使様たちのご加護を受けた最強の剣! あらゆるものを切断する、無双の剣よ!」
「そうか。警告する。さっさと出て行け」
「ほざけ! 死ねぇええええええ!」
騎士達が俺に斬りかかってくる。
がきぃんっ! と剣が俺の体に当たった瞬間、刃が折れたのだ。
「そんなバカな!? われらが誇る天の剣が通じぬだとぉおおお!?」
「【麻痺】」
「がっ!」「ぎっ!」「ぐわぁ!」
どさり、とその場に天導騎士達が倒れ伏す。
「ば、ばか……な……状態異常、魔法……だと……? われらが……聖なる鎧は……全状態異常にたいする……強力な……耐性がある……のに……!」
ノーキンが俺を驚愕の表情で見やる。
「す、すげえ……! 人狼が束になってもかなわなかった相手を、瞬殺するなんて! さすが魔王様!」
いや殺してないんだが……。
「おまえらのやっていることは、俺らに戦争ふっかけるのと同義だぞ。きちんと上には報告させてもらうからな」
「ち、くしょぉ~……そうは、させるかぁ……!」
ノーキンが首にぶら下げていたペンダントをブチッ、とちぎる。
「【天使召喚】!」
カッ……! と神々しい光が、天に向かって伸びる。
そこから降りてきたのは、白い巨大な彫像だ。
「て、て、天使だぁ……!」
白い翼を広げ、巨大な翼を生やし、頭の上には金色の輪。
「ひゃはは! 見たかこれが天使よぉ! Sランクモンスターすら瞬殺してみせる力があるんだぞぉ!」
「【麻痺】」
バシッ……! と天使が硬直し、地に落ちる。
「な、なにぃいい!?」
「ほんとはこの力、あんま使いたくないんだが……」
俺は倒れている天使に触れて言う。
「【猛毒】」
その瞬間、天使はドロドロに溶けた。
これも状態異常スキルのひとつ、なのだが……。
「相手を溶解させるほどの威力はなかったんだがな」
「す、すげえ! 魔王様天使すらワンパンなんて!」
尊敬のまなざしを向けるこぼる太たち。
一方で、天導の騎士たちは震えていた。
「ば、化け物だ……」「いや、ま、魔王だぁ!」「ひぃいいい!」
俺はノーキンを見下ろしていう。
「悪いけどおまえらを捕らえさせてもらうぞ」
「ち、くしょぉ~……覚えてろよぉ~……【大司教グブツ】さまが、黙ってないぞぉ」
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