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62.名付けで進化



 建国宣言からしばらく経った、ある日のこと。

 魔王国の牧草地帯にて。


「こんちはー」

「おお、先生!」


 農家のおっちゃんが、俺に気づくと手を振る。


 おっちゃんは王国に居たときからの知り合いで、懇意にしていた農家さんだ。


「いや、今は魔王様だっけ?」

「よしてくれよ、おっちゃんにそんな他人行儀にされたら悲しいよ」


「すまんすまん! しかし先生も立派になったなぁ。うんうん、我が事のようにうれしいよ」


 ニカッと笑って、おっちゃんがバシバシと背中を叩く。


 おっちゃんを始めとした、王国に居た俺と親交の深かった農家さんは、だいたい魔王国にやってきていた。


「牧場の具合は?」

「良好さ。こんな立派なの建ててもらってすまんねえ」


 必要となる設備は、俺が錬金で作ってある。

 柵の向こうでは牛たちがのんびり草を食べていた。


「それと、【あいつ】らはどう?」


 牛の近くを、ひとりのモンスターが歩いている。

 犬人コボルトといって、二足歩行する大きな犬、という印象のモンスターだ。


「ああ、みーんな働き者でよぉ。助かってるぜ」

「悪いなおっちゃん、雇ってもらってよ」


「いいっていいって、他でもない先生の頼みだからね」


 さて魔物と人間の共存できる国を目指す上で、まず最初の障害となってくるもの。


 それは、【偏見】だ。


 人間はモンスターに対して、どこかやはり【人を襲う化け物】という偏見がついて回る。


 それを取り払うために、魔物達にこうして、人間と一緒に働いてもらっているのだ。


『まおーさまー』


 ととと、と犬人たちが俺に気づいて、近づいてくる。


 ぱたたたっ、と尻尾が凄い早さで振られる。


「おっす。みんな元気でやってるか?」


『おー』


 ここで働いている犬人は10名。

 おっちゃんの指導の下、真面目にやっているそうだ。


「ただなー、ちょっと困ったことがあってよ」


「なにかあったのか?」


「意思の疎通が取れなくてな。先生と違って、普通のひとは魔物の声が聞こえないんだわ」


 以前飛竜を治療した際、しゃべれるようになった。


 だが犬人のような低ランクの魔物では、しゃべれないらしい。


 魔王曰く、ランクの低い魔物は知性が低いので、それが関係しているのではないか、とのことだった。


「なんとかしてやりたいな。おーい……えっと……」


 そこで、俺は遅まきながら気づく。


「おまえら、名前は?」

『『『なまえー? なにそれー』』』


「え? おまえら、名前ないの?」


 後になって魔王に聞いたことだが、たいがいのモンスター達は固有名を持たないらしい。


「そりゃ不便だな……よし、名前つけてやろう」

『『『!』』』


 くわっ、と犬人たちが目を剥く。


『『『いいのー!? やったー!』』』


 よくわからんが、犬人たちは両手を挙げてその場でダンスしていた。


「先生、この子らは何をこんな喜んでるんかね?」


「さ、さぁ……とにかく、名前つけてくぞ。一列にならべ」


 ザッ、と行儀良く犬人たちが俺の前に並ぶ。


「えっと……じゃあおまえは【こぼる太】」


『おー』


 こぼる太はぴょんぴょん、と飛び跳ねる。

 シュオンッ、と心なしか体が光ったような気がした。


「次。えっとおまえは【こぼ二郎】。でおまえは……」


 と10名分の名前をつけ終わった、そのときだった。


「せ、先生ぇ! こ、こぼる太がぁ……!」


 農家のおっちゃんがびっくり仰天して後ろを指さす。


「なんだ……って、ぇええ!? だ、誰おまえ!?」


 そこに居たのは犬人……では、なかった。

 頭が狼、体が筋骨隆々の人間。


「うぇ、人狼ウェアウルフだと!?」


 犬人はDランクモンスター。

 一方で人狼はAランクのモンスターである。


「魔王様、ありがとうごぜーやす! あなた様のおかげで進化しました!」


「し、進化……?」


「先生! 他の子達もみんな姿が変わってるよぉ!」


 ガタイの良い人狼10名が、俺の前に勢揃いした。


「ど、どういうこと?」


 人狼達がむんっ! とポーズを取りながら言う。


「我らは【名有りの魔物】となったのでございます!」


「上位存在から名前を賜った魔物は、同族の中でもレベルの高いモンスターとなれるのでございます!」


「しかし本来ならレベルが上がるだけで、進化をもたらすということはあり得ないはず!」


「魔王様は特別なのでございましょう! 別の強力な魔物へと進化したのでございます!」


「「「さすがです、魔王様!」」」


 ぬんっ! と人狼10名が気合いたっぷりに言う。


「いやぁ、先生、やっぱあんたたいしたやつだなぁ」


「「「そうでしょうとも、おっちゃんさん!」」」


「お、おお! おまえらしゃべれるようになったんか!」


「「「魔王様のおかげです!」」」


 ランクが上がり知性もまた上がったのだろう、意思疎通ができるようになった。


「名前つけただけで進化させるなんて、さすがだなぁ先生」

【※読者の皆さまへ とても大切なお願い】


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★1巻11/15発売★



https://26847.mitemin.net/i778881/
― 新着の感想 ―
[良い点] 神小説
[気になる点] なまえー?なにそれー からの いいのー!?やったー が気になります 名前が何か知らないのに 名付けられる事に喜びを覚えるのは違う気がします
[一言] 転スラ系の流れ、最近では書籍化されたハズレスキルが使ってたかな。 テンプレって言ったら聞こえはいいけど、この作者、本当にオリジナリティがない。 テイマーのヤツなんかはパクリ乱打だし。
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