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59.国王、宰相に見限られる



 ジークが新たな国の建国を宣言してから、1週間が経過した。


 国王はフラフラ歩きながら、王国内の街道を歩く。


 その姿は酷い物だった。

 ボロ布を身に纏い、髪の毛はすべて抜け落ち、ガリガリに痩せている。


 80の老人と言われてもおかしくないほどの、変わり果てた姿だった。


 国王が立ち寄ったのは、王国の街のひとつ。

 そこそこ大きな街であったはずだが……ゴーストタウンと化していた。


「おぉ~い……だれかぁ~……だれかいないのかぁ~……」


 かすれた声、しかしその呼び声に応えるものは居ない。


 途方に暮れながら、誰も居なくなった街を歩く。


「わしの国民たちは、どこへいったのじゃぁ……だれかぁー……」


 国王はさまよい歩き、国民を探していた。

「わしの国を……立て直すのだ……わしのために働く……駒はどこにいるのだぁ……」


 父から受け継いだ王国を、まさか自分の代で潰したなどとなれば、あの世で先祖に顔向けできない。


「よもや……ジークのもとへいったのかぁ~……国を捨てて出て行くなんて、恩知らずも良いところだろうがぁ、国民のバカどもがぁ~……」


 ここまで追い詰められても、国王は自分が上の立場の人間であることを、捨て切れていなかった。


 と、そのときだ。


「みすぼらしい姿ですね、陛下」


「お、おお……! 宰相……!」


 国王は涙を流しながら、宰相の元へ近づく。


 彼はニコニコと微笑みながら、国王を抱き留めた。


「どこへ行っていたのだ貴様……! 大事な局面で姿を見せずに!」


「申し訳ございません、大切な仕事をしていたものでして」


「このわしが困っていたというのに! わしを補佐する以上に大切な仕事があるわけなかろうが! たわけが!」


 死に体だった国王の体に、少しばかりの活力が戻る。


 なんと言ってもこのものは、自分の信頼の置ける部下だからだ。


「まあよい、宰相よ。現状を報告せよ」


「現在国民のほとんどが国外へ流出しました。ジークの国へ行ったもの、別の国へ行ったもの……また、別の勢力に取り込まれたものもおりますね」


 宰相は手帳を取り出し、ふぅ、とため息をつく。


「今回の件で有力貴族達のほとんどが流れていきました。ようするにもう、この国はおしまいですね」


「な、なんだその言い方はぁ……!」


 まるで他人事のような話しぶりに、国王は憤りを覚える。


「貴様自分の立場を理解しているのか!? このわしを補佐し、連綿と続いてきた王国の歴史を後の世につないでいく、重要で名誉な仕事に就いているのだぞ!?」


 ふぅ……と宰相がため息をつく。


「さぁわしにかしずけ! わしの、王国のために身を粉にして働け! 何のためにおまえを雇ってやったと思っているのだぁ!」


 国王が宰相の髪を引っ張ろうとした、そのときだ。


 パシッ……! とその手を払ったのだ。


「うっせえば~~~~~~~~~~か!」


 ……突然のことに、国王は戸惑う。


「だぁれが貴様なんぞに仕えるかってんだこの愚王!」


「さ、宰相……?」


「今日で宰相を辞任させてもらいます。陛下」


「なっ!? そ、そんなバカな!? どうして!?」


 やれやれ、と宰相は首を振る。


「そんなこともわからないから、こんな大惨事を引き起こすのですよ。このバカ国王」


 宰相に罵られ、ようやく国王は理解する。

 この男は、信頼していたはずの部下の心は……とっくの昔に、自分から離れてしまっていたのだと。


「がんばってあなたのために仕えてやったというのに、あなたは感謝の言葉を一度も述べたことがない。それどころか罵り、無能とさげすみ、暴力を振るう。嫌われて当然とは思いませんか?」


「そ、そんなぁ~……わしらは、よい部下と上司の関係を築けていたではないかぁ~……」


 フンッ! と宰相は馬鹿にしたように鼻を鳴らす。


「ではお尋ねしますが、わたくしの名前を言ってみてください」


「え……?」


「名前ですよ、名前」


 ……そう言われても、国王はすぐに名前が出てこなかった。


「結局のところ、その程度の信頼関係なのですよ。さよなら」


 きびすを返し、国王の下から、宰相が立ち去ろうとする。


「ま、ま、まってくれぇ~……おまえまでいなくなったら、わしは、わしはどうやって国を立て直せば良いのだ~……」 


 国王が腕を引いてとめようとするが、その手をバッと振り払う。


「知りません。ジークに頭でも下げに行けばよいのでは?」


「そ、そんなのもう遅い……手遅れだ……」


「はぁ~……わたくし、言いましたよね。早い段階で、ジークに頭を下げ、自分の間違いを認めろと」


 宰相は蔑んだ目を彼に向ける。


「部下の言葉に耳を向けず、我を通した結果がこれです。甘んじて受け入れなさい、己が、最も無能で無価値な人間だと言うことに」


 国王は魂が抜けたような表情で、どさりと倒れる。


 宰相は路傍のゴミでも見るような目で国王を見やると、その場を後にするのだった。

【※読者の皆さまへ とても大切なお願い】


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★1巻11/15発売★



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 宰相、、国王のことバカにできないでしょ。 誰が事の発端ですか??
[一言] 宰相も嬉々としてジーク追い出したくせに、自分の事は棚上げかぁ( ´-ω-)y‐┛~~
[一言] 他のキャラもそうだけど頭悪すぎるのがちょっと… 宰相ともあろうものが「うっせえば~~~~~~~~~~か!」 は流石に…まぁこれまでの行動もアホだからその程度の知能といえばそれまでではあるんだ…
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