58.国王、ジークを手にする最後の機会を失う③
「こんなの俺はいくらでも作れる。無限にな」
ジークは両手を広げる。
すると周囲に10メートル級の魔力結晶ができた。
「霧氷錬金で魔力結晶が作れるようになったのか! それほどまでに強くなったんだなぁ! さすが先生!」
「おそらくは魔王の名を継いだことで、新たな称号を得たのだろう。救世ノ医師……否、今の彼は【救世ノ王】となったのだ」
神竜王および、旧魔王が、ジークに対して尊敬のまなざしを向ける。
「資源は俺が提供する。魔物達の身の安全を保証してくれるならな……だが国王、てめえにはやらん」
パキィン! と魔力結晶は砕け散り、塵となって消えた。
「今後一切俺たちの国との関わりを持たないよう、国交断絶をここに宣言する」
「そ、そんなぁ……!」
国王は気づいた。
魔物が今後ジークの国ですべて保護されるとなると、魔力結晶が手に入りにくくなる。
ジークが生み出した魔力結晶が手に入れば問題なかったが、今彼から絶縁を食らった。
つまり……生活をしていく上で、必須となる魔力結晶を、永久に失ったと言うことだ。
王都を失い、騎士を失い、魔力結晶も失い……。
「これで王国が滅ぶことは確定したな」
セインが呆れたようにつぶやく。
「ふんっ! 先生を虐げ、道具のように使おうとしたのがいけねえんだ。ざまぁみやがれ!」
神竜王を含めた、その場に居た王達が、みな国王に対して軽蔑のまなざしを向ける。
「みんな、行こう」
ジークは皆を引き連れて、その場を立ち去ろうとする。
いつの間にか王国に存在した魔物達が、ジークの後ろをついて行く。
「ま、待って! 待ってくれぇえええええええええ!」
国王は泣きわめきながら、ジークの足にすがりつく。
「悪かった! わしが悪かった! 頼む! なっ! わしらもおぬしらの連邦国に入れてくれぇ!」
だがジークは振り向きすらしない。
「すまなかった! おぬしを畜生係と馬鹿にして悪かった! おぬしは凄い! 天才! 世界の宝!」
「今更気づいてもおっせーんだよ、たーこ!」
神竜王がゲシッ、と国王を蹴りつける。
黄金の竜へと変わり、天を覆う。
その場に居た人間、魔物達が、神竜王の魔法によって、その背中に乗る。
「お、おれも連れてってくれぇ!」
「ぼくも!」「わたしもぉ!」
王国で牧場を経営していたものたち、農家、そのほか国を支えていた第一次産業従事者たちが、名乗りを上げる。
「じゃあな国王。今度こそ、もう二度と会うことはないだろう」
神竜王の頭に乗るジークが、国王を見下ろして言う。
「待ってくれぇええ! 戻ってきてくれぇえええ! ジークぅううううううう!」
「もう、全部遅えんだよ」
そう言うと、神竜王はジークやそのほか、彼の建国に賛同した者たちをつれて、その場を後にする。
「あ……あぁ……あ……」
国王は全てを失い、大の字になって倒れる。
深い深い後悔の念が、彼を襲ってきた。
「……おしまいじゃあ、ジークを追い出した時点でもう……遅かったのじゃあ」
今更気づいたところで、もうすべて、遅すぎたのだった。
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