54.VS勇者パーティ
俺が魔王を治療し、状態も落ち着いてきた、ある日のこと。
「魔王ぅううううう! この勇者マケーヌ様が、ぶっ殺しにきてやったぞぉお!」
魔王の寝室に、勇者がやってきた。
赤髪の青年の後ろには、聖騎士、魔法使い、召喚術師。
おそらくはマケーヌのパーティメンバーと思われた。
「って、ジーク! てめえ、なんでここにいるんだ!?」
勇者は魔王達の内部事情(始祖の呪い)を知らない。
当然、俺がここに呼ばれた理由もまた。
「聞いてくれ、マケーヌ。魔王は病気だったんだ。それを治すために俺が呼ばれた」
「病気ぃい? なんで魔王の病気を、たかが畜生の医師であるてめえが呼ばれるんだよ!」
「最初から話す。俺たちはもう、魔王と争わなくていいんだ」
説得を試みようとするが、勇者は首を振る。
「うるさい! さては貴様、魔王に洗脳されてやがるんだなぁ……!」
「……はぁ? なんでそうなるんだよ」
どうやら聞く耳を持ってくれないみたいだ。
「……すまぬ、ジーク殿」
魔王が深々と頭を下げる。
解呪のあとわかったことだが、始祖の呪いが解けたことで、魔王は弱体化していた。
おそらくは呪いと引き換えに高い魔力と魔法の力を得ていたのだろう。
魔王は戦えない。
となると……。
「ジーク、邪魔するんだったら、ボクらがおまえを殺す!」
「……そうか。なら、俺が相手しよう」
武器を構える勇者パーティ達。
一方で俺は素手だ。
別に勇者達を殺すのが目的じゃないからな。
「いくぞぉてめぇらぁ!」
たんっ……! と勇者と聖騎士が突っ込んでくる。
……だが妙に勇者が遅かった。
「【麻痺】」
スキルを発動させる。
聖騎士は素早く気づいて、高く飛び回避した。
「ガッ……!」
一方勇者は麻痺を食らって、その場で動けなくなる。
「くそっ! またこれかっ! 麻痺対策もしてたのに、どうして!?」
勇者には首飾りが見て取れた。
状態異常への耐性を獲得するアイテムかなにかだろう。
「せやぁああああああ!」
聖騎士の男が俺に斬りかかってくる。
だがその動きは神の眼でハッキリと見えていた。
高速の連撃を手で打ち払っていく。
「やるじゃないか、君。医師でそこまでの武芸の才があるとは。感服したよ」
「そりゃどうも!」
聖騎士の腹部に蹴りを放つ。
だが彼は腰を落として防御の構えだ。
「【不動要塞】!」
聖騎士がスキルを発動させる。
俺はそのまま蹴りを放った。
ごぃん! と鈍い音がする。
防御力を上げるスキルか……と思っていたのだが。
「ぐわぁあああああああ!」
凄まじい勢いで、聖騎士が吹っ飛んでいく。
壁に激突し、そのまま崩れ落ちる。
「動けなくなる代わりに、完全に物理攻撃を無効化するスキルだったのに……それを打ち破るとは……化け物か」
前衛2人を無効化し、残るは後衛組だけだ。
だがふたりともすでに攻撃準備が整っている様子だ。
「スキル【多重魔法展開】!」
魔法使いの子がスキルを発動。
彼女の周囲に、4つの魔法陣が浮かび上がる。
「行きます! 【煉獄業火球】! 【颶風真空刃】! 【神聖十字槍】! 【天裂迅雷剣】!」
4つの極大の魔法が、俺めがけて放たれる。
だが俺は逃げない。
ここで逃げると魔王や娘のイレイナに被害を及ぼす。
俺は新たな力を試す。
「【奇跡殺し】」
ボシュッ……! と4つの魔法が、まるで霧のように消し飛んだ。
「ま、まさか【奇跡殺し】!? あらゆる奇跡の技を無効化するという、あの伝説の邪神が使った技を!?」
魔法使いの子がその場に尻餅をつき、声を震わせる。
「【悪魔召喚】!」
召喚術士の子が悪魔を呼び出す。
上半身が人間、下半身が蜘蛛の大悪魔を呼び出す。
「ころせぇえええ! この場に居る敵は全員ぶっころすんだよぉおおお!」
マケーヌが叫ぶと、蜘蛛の悪魔が俺に襲いかかってくる。
俺は霧氷錬金で【それ】を作り出す。
光り輝く刀身をもって、俺は悪魔を一刀両断した。
「ば……かな……バカなバカなあああああ! なぜてめえが! それを持ってやがるうううううう!?」
俺の手に握られていたのは、【聖剣】。
かつてこのマケーヌが使っていたものだ。
救世ノ医師となったそのときから、聖剣の使い手に選ばれたというアナウンスが聞こえた。
「それはボクのだ盗人めぇええ! 返せぇえええ! かえせよぉおお!」
麻痺が解けて、勇者が殴りかかろうとする。
「やめろ、マケーヌ!」
聖騎士が彼の腕を掴んで止める。
「離せ! おまえも魔王に洗脳されたのか!?」
「彼は元から操られていない」
「なぜわかる!?」
「わかるさ。彼が本気でないことくらいはな」
はぁ!? とマケーヌが驚愕の表情を浮かべる
聖騎士の男は俺を見てうなずく。
俺は聖剣を納める。
「もし彼が本気だったら、我々は瞬殺されていただろう」
話のわかるヤツが居てくれて助かった。
「我々の使命は終わったのだ。彼が、ジーク殿が魔王と勇者の因縁を断ち切ってくれたのだ」
「ちくしょぉ……! 認めねえ! ボクは絶対そんなの認めないぞぉお! くそぉおおおお!」
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