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53.勇者、弱体化しゴブリンにすら敗北


 ジークが魔王の呪いを解いた、一方その頃。


 マケーヌ達勇者パーティは、魔王討伐の旅の途中、とある村にて立ち寄っていた。


「くそ! 腹立つ! あの畜生係め! 何度もボクをこけにしやがって!」


 村長の家に、勇者達は泊めてもらっている。

 藁のベッドの上でマケーヌは憤っていた。


「まあまあ落ち着けよリーダー」


 最年長の聖騎士が、なだめるように言う。


「というか! なんでジークに復讐にいかせてくれないんだ!」

「そうはいってもおまえには魔王討伐っていう任務があるじゃないか。それをサボる訳にはいかないだろ」


 勇者達は始祖の呪いのことや、魔王サイドの内部事情を知らない。


 ゆえにまだ勇者達は魔王を倒そうとしている次第だ。


 と、そのときだった。


「ゆ、勇者様! 大変です! 魔物が村にやってきました!」


 村長が慌てて勇者たちの部屋へと入ってくる。


「魔物ぉ~? 相手は?」

「ゴブリンの群れにございます!」


「はぁ~~~~~? ゴブリンぅ~」


 マケーヌは落胆の表情でため息をつく。


「そんなもん、おまえたちでなんとかしろよ」


「そ、そんな! 我らには魔物と戦うすべはありませぬ!」


「うるせえ。ボクはそんなザコ相手にする暇なんてないんだよ」


 はぁ、と聖騎士がため息をついて、マケーヌの頭を叩く。


「いった! なにすんだ!」

「ほら行くぞ。泊めてもらってるんだから。一宿一飯の礼ってやつだ」


 聖騎士に首根っこをつかまれ、ふたりは外に出る。


 深夜と言うことで、女子たちには悪いと、男2人で村へと向かう。


「ぎゃぎゃっ!」「ぎっ!」「ぎゃあすぎゃぁす!」


 ゴブリンの群れが村の中に入っていた。


 彼らの目は赤く、手に棍棒を持ち、人々を襲おうとしている。


「お願いします、勇者様」

「はぁ~~~…………しょーもな。ゴブリン倒したところで名声にはならないっつーの」


「ほらいくぞ。敵の数は多い。二手に分かれて対処だ」


 聖騎士は村の北側のゴブリンを討伐しにむかう。

 勇者は舌打ちをし、南側へと向かう。


「やれやれ……ほんと村人ってやつはザコで困る。こんな雑魚モンスターひとつに手間取るんだからよぉ」


 村人達が農具を片手に、ゴブリンを追い返そうとしている。


「勇者様!」「勇者様が来てくださった!」


「あーはいはい、無駄な努力ごくろーさん。おまえらザコは邪魔だから、とっとと下がってなよ」


 野犬を追い払うように、勇者が手を振って言う。


「な、なんですかその態度!」「おれたちだって弱いなりに頑張ってるのに!」


 不満の声が上がっていても、勇者は態度を改めない。


「だまりなザコども。ゴブリンみたいな低級モンスターに手こずるような弱者は生きてる価値もないんだよ」


「こ、この……! 言わせておけば!」


「悔しかったらゴブリンくらい秒で倒してみなよ。こんなふうに!」


 勇者は腰の剣を抜いて、ゴブリンに特攻する。


 ……この時点で、自分の異常に気づけていれば、負けることはなかった。


「ぎゃぎ? ぎゃー!」


 ゴブリンは勇者に気づき、手に持った棍棒を振り下ろす。


「ばーか! そんな攻撃当たるかよ……ぶぎゃっ!」


 棍棒が勇者の頭に、クリーンヒットしたのだ。


「「「は……?」」」


 その場に居たゴブリンも村人も、みな呆然とする。


 勇者がゴブリンの攻撃をまともに食らって、地面に倒れたからだ。


「へ? な、なんだ……どうなってるんだ……?」


 ふらつきながら、マケーヌは立ち上がる。


「良かったなザコども! まぐれでも勇者に一撃入れられたんだ! それを土産に冥途へいきやがれ!」


 だが勇者は剣を手に、ゴブリン達を斬りつける。


 ガキンッ……!


「なっ!? ば、バカな!」


 勇者の剣はゴブリンの棍棒によって、完全に防がれたのだ。


「お、おかしい!? なんで!? どうしてこんな……ふぎゃっ!」


 他のゴブリン達から攻撃を受けて、勇者が倒れる。


「お、おいどうなってるんだ……?」「勇者様がゴブリンにやられてるぞ……?」


 どごっ、ばこっ! とゴブリンにタコ殴りにされる勇者。


「や、やめろぉ! ぼ、ボクは勇者だぞぉ……! ぶべっ!」


 この時点で勇者も、そして村人も、こう解釈した。


【このゴブリンたちが、勇者を倒すほどに強いのだと】


「マケーヌ! なにやってるんだ!」


 北側の対処を終えた聖騎士が、勇者の元へやってくる。


 剣で軽く払うと、ゴブリン達は木の葉のように簡単に吹っ飛んでいった。


「どうしてそんなケガを負ってる?」


 聖騎士はマケーヌに治癒を施す。


「し、しらねーよぉ……なんか、ゴブリンが強くなってるんだよおぉ……」


 聖騎士も、そして村人達も首をかしげる。


「で、でも聖騎士様はゴブリンを容易くしりぞけたぞ……?」

「もしかして……勇者様が弱かったのでは……?」


 かぁ……! と勇者は顔を赤くして声を荒らげる。


「そ、そんなわけないだろ! どけ!」


 マケーヌは立ち上がり、剣を持ってゴブリン達に駆け寄る。


「ぎゃ?」「ぎー……?」


 ……この時点で、ここのゴブリン達は魔王の呪いが解けた。


 呪いは同時多発ではなく、伝播していくように、徐々に解けていくのである。


 つまりもう人間を襲う気は、このゴブリン達にはなかった。


「死ねぇえええええええ!」


 とは言っても、おそわれたら反撃するのは必定。


 ゴブリンは襲ってきた勇者……否、弱そうな一般人相手に、棍棒を振った。


 ばきぃん! と気持ちが良いくらい、勇者の顔面に棍棒がクリーンヒット。


「ふんぎゃぁああああああ!」


 勇者はボールのように高く上がって、地面に落ちた。

 

 ゴブリン達はいそいそと、その場から逃げていく。


 しばしの沈黙の後、村人がつぶやく。


「……うわ、よっわ」


 村人達の表情には、ありありとした失望と、そして嘲笑の笑みが浮かんでいた。


「ゴブリンにやられてんじゃん」「あんだけ調子乗っておいてこれかよ。ぶふっ、よっわ」


 くすくす……と村人達から馬鹿にされる。

 一方で全身を強打し動けない勇者は、顔を赤くしながら叫ぶ。


「ちょ、ちょっと調子が悪かっただけだ! くそっ! 笑うな! 笑うんじゃねえ! そんな暇あるならとっとと助けろう゛ぉけが!」


 だが村人達は近づいてこない。


「あーあ、なーにが勇者だよ」「こんなんで魔王倒せるのかね」「無理じゃね。こんなのじゃな」


 ぞろぞろ……と村人達も立ち去っていく。

 聖騎士は勇者のもとへゆき、治癒魔法をかける。


「おまえ、なにふざけてるんだよ」

「ふざけてなんてねえよ! くそっ! なぜだ!? どうなってるんだよぉ!」


 ……マケーヌは知らない。

 今の彼は、勇者としての称号と力を剥奪され、一般人以下にまで弱体化してることを。

【※読者の皆さまへ とても大切なお願い】


「面白い!」

「続きが気になる!」

「もっともっと国王たち『ざまぁ』されろ!」


と思っていただけたら下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に変えて、作品への応援おねがいいたします!


面白かったら星5つ、

つまらなかったら星1つ、素直に感じた気持ちで全然かまいません!


ポイントは今後の更新継続のとても大きな励みになりますので、なにとぞ、ご協力をお願いします!

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★1巻11/15発売★



https://26847.mitemin.net/i778881/
― 新着の感想 ―
[一言] 称号ブーストがチート並の能力加算があっただけで 剥奪されたら一般人に劣るとは… 何故にこやつに称号いったのか
[良い点] 最近の他の作者は悪人を断罪しないで、ダラダラ話を伸ばす傾向があり、いい設定の小説を見つけても途中で嫌気がさしてましたが、とても良い悪人の切り捨てかたで読んでて気持ちいいです。 これからも頑…
[一言] ココにまた一人、因果応報の人がw
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