05.獣人の国にスカウトされる
「わたしは【ミント】。獣人国ネログーマで近衛騎士を務めております」
俺が助けた猫耳少女が、ペコッと頭を下げる。
「獣人国って……たしか東方にある、緑豊かな国だよな」
深い森には魔石などの資源が多く眠っており、周辺国と比べかなり裕福だと聞く。
でもあそこって……確か国交を断絶してるんだよな。
昔獣人は虐げられていた時期があって、人間その他を毛嫌いしていると聞いたことがある。
「どうしてこんなとこにいるんだ?」
「それは……」
ミントが答えようとした、そのときだ。
『あたちが連れてきてって、たのんだのー!』
ぴょんっ、と俺の肩の上に何かが乗っかる。
「うおっ、この間の白いワンコじゃないか」
森のなかで、しびれ草を食って動けなかった子じゃないか。
て、ゆーか……え、えええ!?
「おまっ、しゃ、しゃべてるぅ!?」
『しゃべってるー!』
しゃべる犬など聞いたことがない。
文献では高位の魔獣がしゃべると聞いたことがあるが……。
けれどこの子からは魔獣特有の邪気を感じない。
「その御方はわがネログーマに御座す【神獣】でございます」
「し、しんじゅう……?」
「ええ。古来よりこの世界に存在し、特別な霊力を持つ偉大なる獣様、そのご息女でございます」
『あたち、【ハク】!』
どうやら俺が助けたのは、とんでもない動物だったらしい……。
『あたち、おにーちゃんに会いに来たのー! おれー、言いたいのー!』
「お礼……? なんかしたか俺?」
するとミントは感極まったような表情で、声を震わせていう。
「なんと……神獣様のお命を救ったというのに、さも当然のことのように振る舞う。素晴らしい御仁でございますな、ハク様!」
『そー! おにーちゃんちょーいーひとでしょー!』
するする、とハクは俺の肩を昇って、頭の上に乗る。
『あたち、おきにいりました!』
「なんと! では、神子に選んだのですね!」
『うんっ!』
な、なんだかよくわからない事態になってるんですがそれは……。
「神子様、お名前を伺っても良いでしょうかっ!」
ミントが俺の手を掴んで、キラキラした目を向けてくる。
「え、えっと……ジーク・ベタリナリ。ジークでいいよ」
「ではジーク様! ぜひ、わが獣人国に来てはいただけないでしょうか!」
く、国に招待だとっ。
「あそこって人間は入れないんじゃないのか?」
「本来ならば、ですが、あなた様は特別です。我が国の大切な客人としてぜひ迎え入れたいと存じます」
「いやでもな……急に言われても……」
「ああ、すみません。そうですよね、元の生活がありますものね」
「あ、いや……たったいま国外追放になったばっかりだけど」
「ならば好都合です!」
お、おう……ぐいぐい来るなこの美少女。
「お仕事がないのでしたら、ぜひ宮廷医師として我が国で働くのはどうでしょう」
「宮廷医師……いや、俺人間の医師じゃないが」
「我が国の全員が獣人でございますゆえ」
なるほど、獣ノ医師としての技術が使えるかも知れないってことか。
「宮廷医のお給金は、元いたところの3倍……いや、5倍は出してもらえると思います。週休3日。ボーナスも支給します。住むところもご用意しますし、各種手当てのほか、福利厚生もしっかりとしております」
「乗った!」
なんて素晴らしい好条件。
断る理由なんてない!
「では、参りましょう。ご案内します、我が国へ!」
『やったー! おにーちゃんとずぅっといっしょー!』
かくして、俺は獣人国に雇われることになった、のだが……。
『ぐぬぬ、ジーク……あったばかりの女の子にデレデレしてっ。ひどいっ!』
「え? な、なんだこの声……?」
どこからか、若い女の子の声が聞こえたような気がした。
でもミントでも、ハクでもないし……。
この場にいるのは、他に地竜のちーちゃんだけだ。
「どうしたのですか、ジーク様?」
「あ、いや……気のせいかな。いこうぜ、ちーちゃん」
俺は地竜のちーちゃんにまたがって、ミントたちとともにその場を後にする。
『獣人なんかにアタシの大事なジークはゆずらないんだからねっ!』
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