49.国王、力尽くで連れ戻そうとするが失敗
ジークが勇者マケーヌを撃退した、数日後。
性懲りもなく、国王は獣人国に向かっていた。
「へ、陛下引き返しましょう。こんなことをしている暇も人員もありませぬ……!」
イエスマンの宰相にしては珍しく、冷静な意見を述べる。
現在、王都民たちは近隣の街へと避難させた。
だが魔獣達の活性化は止まらず、王国内のあちこちの街を襲いだした。
このままずるずると、王国の所有する土地が魔獣によって侵略されていき、最悪滅ぼされるというシナリオもありえた。
「黙れぇええ!」
国王は顔を真っ赤にして、宰相の頭を杖で殴る。
「ジークを連れ帰れば万事解決なのだ! そう、今この事態を招いたのは全てジークのせいだ! やつをとっ捕まえ、魔獣どもを大人しくした後、しかるべき罰を与えるのだぁ……!」
完全な責任転嫁であった。
元はと言えばこの事態を招いたのは、獣ノ医師をないがしろにし、理不尽に追い出した国王のせいだというのに……。
ややあって。
またも国境の町サクツまでやってきた国王一行。
「今度は前回の3倍の量の騎士を連れてきた! これならやつとて降伏するに違いない!」
と、そのときであった。
「へ、陛下ぁ……!」
「なんじゃ……って、うわぁああああああああ!」
国王および騎士達は、その場で腰を抜かした。
「か、か、火竜だぁ……!!!」
火竜、それは竜種のなかでも上位の強さを持つドラゴンだ。
強力な炎のブレスを得意とする、ランクSのモンスター。
「陛下ぁ! 火竜が1……2……か、数えきれません!」
「どどどっ、どうなってるんだぁああ!?」
火竜たちが国王達の上空までやってくると、こういう。
『帰れ! バカ国王達!』
「しゃ、しゃべっただとぉおおお!?」
魔獣は基本的に、しゃべらない生き物である。
だが、彼らはジークの手により、しゃべる能力を獲得していた。
『兄貴の手をわずらわせるなっす!』
『ジーク先生を連れて帰るつもりだな! そうはさせねーっす!』
この場に居るのは、元は飛竜たちだった。
彼らはジークの治癒を受けた後、存在を進化させたのだ。
全獣ノ医師の治癒は、治癒の力のみならず、魔獣の力を底上げする能力までも持っていた。
結果、攻撃力が低いはずの飛竜達は、Sランクの高火力モンスターへと進化した次第。
「き、騎士達よ! あの竜どもを殺せ!」
だが国王の命令に従う騎士は、誰ひとりとしていなかった。
「お、おれはもう無理! やめてやるぅ!」
騎士のひとりが、情けない声を上げて、きびすを返して逃げていく。
「ま、待て! 待たぬか! どこへいく!?」
引き留めようとする国王であったが、騎士はひとり、またひとりと逃げていく。
「こんな過酷な労働環境、耐えきれない!」
「ただでさえ辛いのに火竜の相手? ふざけんな!」
「獣人国と戦争したいならあんたが勝手にやってろバカ国王!」
わぁ……! と騎士達が逃げ出していく。
「バカ者どもが! おい! 逃げるヤツらは放っておけ! 火竜を倒しジークを連れ戻すのだ!」
『野郎ども! ジーク様を守れっす! ブレス……掃射!』
火竜の群れが、国王達の上空から炎を吐き出す。
騎士の鎧も剣も飴細工のようにドロドロにとかし、皮膚を焦がす。
「うぎゃぁあああああ!」「ひぃいいいいい!」「無理無理無理無理ぃいいいい!」
さらに多くの騎士達が、国王を置いて逃げていく。
「ば、バカ! わしを置いて逃げるとはどういう了見だ! 戻れ! 戦え無能どもが!」
だが騎士が逃げるのも致し方ないこと。
こんなにもたくさんのSランク火竜たちなんて、彼らは今まで相手したことがないのだろう。
騎士は三々五々散っていき、ついには国王まで逃げだす。
『もう二度とウチの敷地をまたぐなー!』
『くらえ! ファイヤー!』
ごぉお……! と火竜のブレスから、国王は必死になって逃げる。
「くそっ! くそっ! ジークめ! くそっ! 下手に出ればいい気になりやがって! くそぉ!」
だが竜の炎が国王の尻を焼くと、情けない声を上げながら走る。
「ひぃいいいいい! 熱いよぉおおおおおおおお!」
……そのまま国王は、騎士達を連れて敗走。
今回の件で数多くの王国騎士達は逃げていった。
こんな無意味なことをするより、自国を守ることに力を割いていれば、と後になって後悔する羽目となるのだった。
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