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46.国王、ジーク連れ戻しに来たがもう遅い



 ジークが勇者を退けた、一方その頃。


 獣人国国境の町、【サクツ】にて。


 国王は騎士の護衛の元、ジークを連れ戻しにやってきていた。


「何者だ、貴様! ここは獣人国、人間の立ち入りは禁じられている!」


 門番の獣人が、国王に槍を向けて警告する。


「黙れ畜生風情が! このわしは国王であるぞ! さっさと通さぬか!」


 だが獣人達は掟に従い、人間である国王の立ち入らせようとしない。


「ならばジークを連れてこい! 今すぐ!」

「ジーク様に何用だ!」


「黙れ畜生風情が! 人間に口答えするな!」


 国王は騎士から剣を奪い、ブンッ……! と振る。


「くっ……!」


 門番の右腕をざっくりと斬りつけ、血がポタポタ……と流れ落ちる。


「早くしろ! わしは急いでいるのだ! あまりモタモタするようなら次は首を切るぞ!」


 そのときだった。


『兄貴を連れてきたっすよー!』


 上空から飛竜とともに、獣ノ医師ジークがやってきた。


 彼は空中でジャンプすると、門番の前に着地する。


「ジーク様!」

「ケガないか?」


「はいっ!」


 ジークは門番の青年の腕を見て、顔をしかめる。


「我慢するな」

「い、いえっ。決して我慢はしておりませぬ。ただジーク様のお手を煩わせるわけにはと」


「いいから。腕を貸せ」


 すぐさま神の手を使い、門番の傷を癒す。


「ありがとうございます!」

「下がってろ。ここは俺がやる」


 ジークは国王と相対する。


「……あんたが傷つけたのか?」


 王の手には剣が握られており、剣先からポタポタと血が流れている。


「そんなことはどうでもいい! ジーク! おぬしに頼みがあって、わざわざこうして来てやったのだ!」


 ピクッ……と彼のこめかみが動く。


 どうでもいい、と。

 無辜の獣人を理不尽に傷つけておいて、そう言ったのだ。


「ジーク、我が国に今すぐ戻ってこい」


「嫌だ」


 バッサリと、ジークが切り捨てる。


「な、なぜだ……?」

「自分の胸に手を置いてよく考えてみろ」


 ジークは、国王が氷竜を殺すために、勇者をけしかけたと思っている。


 傷付いた患者の命よりも、己の復讐心を満たすために、過剰戦力である勇者を派遣した。


 今も自分の目的のために、獣人を簡単に斬りつけた。


 ……ジークは、そんなふうに他者の命を尊重しない国王のことを、心底軽蔑した。


「そんな暇はない! 王都が今大変なのだ! おまえの力が早急に必要な状況下にある!」


「知らねえよ、そっちの都合なんて。俺には全く関係のないことだろ」


「か、関係のあることだ! 貴様の飼っていた魔獣が言うことを聞かなくて困っているのだ!」


 はぁ……とジークがため息をつく。


「お言葉だけど国王陛下、あの魔獣達は国の所有している国防用の使い魔だろ? 俺のものじゃない」


「し、しかし……!」


「第一使い魔達は適切に管理していれば、滅多なことが無いと言うことを聞かなくなるなんてことはない。大方、適当なヤツらに飼育させていたんだろ」


「うぐっ……!」


「……その顔じゃ、図星って感じか」


 はぁ、とジークがため息をつく。


「と、とにかくおまえがいればすべて丸く収まるのだ! 国に帰ってこい! 今なら元のポジションも空いているし、全て元通りに」


「もう遅えよ!」


 俺は国王達を見回していう。


「俺は獣人国の人間だ。自国の問題はあんたらで対処するべきだろ」


「そ、そんな無責任だぞ!」


「俺は責任もって獣たちの面倒を見ていた! 理不尽な理由で追い出したのはあんたらだし、俺がいなくなったら大変なことになるって忠告もした! その上で追い出したくせに、今更帰ってこい? ふざけんじゃねえ……!」


 ジークは自分への被害よりも、氷竜や門番に対する、国王の所業が許せなかった。


 彼の怒りは決して私憤ではない、あくまでも命を大事にしない国王に対して怒っているのだ。


「そういうわけだ。俺はあんたらに協力する気はない。帰ってくれ」


 きびすを返して、俺は立ち去ろうとする。


「ま、待ってくれ! 本当にマズい状況なんだ! 頼む! 待ってくれぇ!」


 国王が俺の腕を掴む。


「【麻痺パラライズ】」


「ガッ……!」


 国王とお連れの騎士達が、いっせいに麻痺で動けなくなる。


「チノ。こいつらを元の国へ転送してやれ」

『かしこまりました』


 一部始終を上空から見ていた妹魔導師が、魔法を発動させようとする。


「ま、待ってくれぇ~……考え直してくれぇ~……」


 シュンッ! と国王達が消え去る。


 転送された先には、崩壊している王都の姿があった。


 もう……すべてが手遅れだった。

【※読者の皆さまへ とても大切なお願い】


「面白い!」

「続きが気になる!」

「もっともっと国王たち『ざまぁ』されろ!」


と思っていただけたら下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に変えて、作品への応援おねがいいたします!


面白かったら星5つ、

つまらなかったら星1つ、素直に感じた気持ちで全然かまいません!


ポイントは今後の更新継続のとても大きな励みになりますので、なにとぞ、ご協力をお願いします!

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★1巻11/15発売★



https://26847.mitemin.net/i778881/
― 新着の感想 ―
[一言] 国王様、自業自得道をひた走るの図!
[気になる点] 気になる・・・王国民くらいかな。愚王、愚宰相を持ったばっかりに。
[気になる点] >「チノ。こいつらを元の国へ転送してやれ」 これが何の解決に繋がるのか分かりません……。 将来の禍根を今のうちに断つとかは考えないのですね。
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