40.傭兵団を倒し氷竜を救う
俺は周辺を巡回していた飛竜から、傷付いた竜の悲鳴を聞いた、と連絡が入った。
深夜、飛竜の背中にのって現場へと急行すると、城の上に氷竜が横たわっていた。
すぐさまその竜の近くに降ろしてもらう。
『あなた様は?』
「俺はジーク。獣ノ医師だ。悪いがさっそく体を診せてくれ」
氷竜は素直にうなずく。
俺は採血鑑定等を行い、彼女の状態を調べる。
「くそ! なんだこの結界! めっちゃ固え!」
城の下から、ゴロツキどもが攻撃を加えてくる。
大方、この竜を討伐しにきた輩だろう。
ハッキリ言ってバカどもだ。
古竜は賢い。
滅多なことが無い限り人里には降りてこない。
そんな竜が降りてきたとなれば、何かあったのかと考えるのが自然だろうに。
「身体の中で卵がつまって、分娩困難を起こしてる。壊死が始まってきてる。やばい状況だ……」
『お、お腹の子は大丈夫なのですかっ!? 私はどうなっても良いからこの子を助けてください!』
「大丈夫だ。あんたも赤ちゃんも、俺が助ける」
じわり……と竜が目から涙をこぼす。
「すまんがすぐ国に戻って手術が必要だ」
『手術……?』
「簡単に言えば腹を切って卵を取り出す。怖いか?」
氷竜は俺を見て、首を振った。
『あなたに全てを委ねます。心清き魂を持つ、獣ノ医師よ』
こいつを獣人国まで運ぶとなると、邪魔になってくるものがある。
俺はいったん竜の元を離れて、城の庭へと降り立つ。
「おい、あんたら邪魔だ。どっかいってくれ」
「はぁああ!? なんだその態度! このオレ様を【漆黒の餓狼】のキャラモブ様と知っての発言かぁ!?」
柄の悪いリーダーが、俺を恫喝してくる。
確か傭兵団とは名ばかりのゴロツキ集団だったな。
「どこの誰かなんて関係ない。患者の命が最優先だ。悪いが帰ってくれ」
「うるせえ! どーせてめえ、あの竜を横取りするつもりだな!? そうはさせるかぁ!」
このバカどもは、俺が冒険者か何かだと思っているらしい。
「野郎ども! こいつを殺せぇえええ!」
男達がいっせいに、俺に飛びかかってくる。
「【麻痺】」
びくんっ! と全員がその場で固まる。
「なっ!? なんだ……こりゃぁ! う、動けねえ!」
麻痺してはいるものの、倒れない程度には体を鍛えているみたいだ。
俺は高速で移動し、目の前の男の首の後ろに麻酔針を打ち込む。
ドサッ! と男が倒れる。
これは魔獣を眠らせる麻酔薬が塗布されている。
スキルで眠らせると時間が少し掛かるからな。
俺は高速で傭兵団たちに、麻酔針を打ち込んでいく。
「なっ!? なんだこいつめっちゃは、速ぇ! がっ!」
凄い勢いで全員眠っていく。
「く、くそぉ!」
キャラモブが手に持っていた大剣を振りかざそうとする。
だが俺は握りこぶしを作って、大剣の腹を殴り飛ばす。
「ば、バカなぁ!? お、オリハルコンでできた最高硬度の大剣を一撃で割っただと!?」
「うるさい」
俺は麻酔針を打ち込み、キャラモブを強制的に眠らせる。
この間、10秒あまり。
「ほ、ほんの一瞬で……手練れの傭兵たちを鎮圧しただとぉ!?」
なぜか近くに、宰相と国王がいた。
「し、信じられぬ……じ、ジーク……お、おぬし……そんなにも強かったのか……?」
国王が呆然とつぶやくが、無視して、氷竜の元へ。
「すまん。すぐに獣人国に送る」
俺は氷竜の周辺に、術式を描いていく。
『ジーク……あなた様は、とてもお強い。竜を殺し、英雄になりうるほどの逸材です。なのになぜ、魔獣である私の命を救おうとするのですか?』
困惑する氷竜の頭を、俺がぽんぽんとなでる。
「魔獣だろうと、命ある獣たちを救うのが、獣医だからだよ」
転送(遠く離れた場所に物体を送る魔法)の術式が完成する。
『さすが……ジーク。あなた様は素晴らしい人間です。あのゴロツキどもや、無能な国王とは比べものにならないほどに』
術式が展開し、氷竜が獣人国へと転送されていった。
「俺もすぐに国に帰る。頼むぞ」
『まかせてください、兄貴ー!』
俺は飛竜の背中に乗る。
「ま、待てジーク!」
国王が俺に向かって叫ぶ。
「た、大義であった! お、おまえがどうしてもというのなら、宮廷獣医としてのポストを用意してやっても構わないぞ!」
「いらねえよ」
「なっ!? ど、どうして!?」
「俺はもう獣人国で獣ノ医師やってんだ」
「な、なんだとぉ!?」
俺は急いで、その場を後にする。
「ま、待てジーク! おい! 戻ってこい! おい! おぉおおおい!」
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