39.国王、傭兵団に土下座させられる
氷竜に王城を占拠されてしまった。
その数時間後。
夜を迎え、さらに外気温は低下した。
突然の猛吹雪に、ドラゴンの登場。
これで王都民が平静さを保てるほうがおかしい。
「国王ー! なにやってるんださっさと竜をどうにかしろー!」
城壁の外には、数え切れないほどの王都民が押し寄せていた。
「おれらに王都の外に出るなってほざいてるくらいなら、せめて竜をどうにかしろやぼけー!」
「さっさと冒険者雇うなりなんなりして倒せや! 判断がおせえんだよ無能がぁー!」
今王都の外は、国防用の魔獣が言うことを聞かずに暴走している。
これで王都民たちが外に出て、魔獣達によってケガでもしたら、さらに責任追及されてしまう。
「店が雪で潰れちまったじゃねーか! どうしてくれるんだー!」
冷害によってすでに王都の町も人も、大打撃を受けていた。
不満と怒りの矛先は、当然この国のトップである国王に向けられる。
そんななか、国王は城壁内にある、騎士団の詰め所にいた。
城は氷付けになっているうえ、氷竜が占拠しているため、避難してきたのである。
「くそっ! バカな国民どもが! こちらの気も知らずに!」
他国への援助も冒険者を雇うこともできない。
騎士も兵士も皆くたくたになっているなかで、氷竜討伐を誰ができるというのか……。
「陛下ー! 助っ人を連れてきましたぞー!」
宰相が笑顔で、詰め所に入ってきた。
「おおっ! でかした!」
ぞろぞろと入ってくるのは、柄の悪い男達だ。
みなガタイがよく、目つきも鋭い……なるほど、歴戦の猛者然としていた。
「彼らは傭兵団【漆黒の餓狼】! 古竜討伐の経験もある、戦闘のエキスパートです!」
餓狼たちは元冒険者だったり、盗賊崩れだったりする、いわゆるゴロツキたちだ。
品位に欠けたみために顔をしかめたくなるが、今は藁にでもすがりつきたい状況。
「おお! よしっ! さっさとあの竜を倒してくれおまえら!」
「ハァ~……ちょっと国王サンよぉ……なんだぁその態度はぁ?」
ゴロツキ達の中で、特に柄の悪そうな男が前に出てくる。
「オレ様は漆黒の餓狼リーダー【キャラモブ】。国王サンよぉ、それが人にものを頼む態度よぉ~? せめて土下座くらいしてみせろや」
「なっ、なんだと!? なぜ一国の王が、貴様らなんぞ底辺の輩に土下座せねばならぬのだ!?」
フンッ、とキャラモブは小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
「あーっそ。じゃあ討伐してやんねー。行こうぜ、野郎ども」
餓狼たちがぞろぞろと、部屋から出て行こうとする。
「まっ、待て!」
国王は慌ててキャラモブのもとへ行き、肩を掴む。
「た、頼む……倒してくれ……」
「あー? 聞いてなかったのかおっさん。土・下・座、しろやごら」
国王が屈辱で顔を真っ赤にしながら、拳を握りしめる。
「……陛下っ。堪えてくださいっ。もう彼らしか倒せませんっ」
「……わかっておるわ! そんなこといちいち口にするなっ!」
今国王の中の天秤は、大きく左右に揺れていた。
今、ここでプライドを捨て漆黒の餓狼にすがりつくか。
……もしくは、ジークに頭を下げて、戻ってきてもらうか。
なんだかんだでジークは強く、そして何より魔獣を鎮める特殊技能を持っていた。
だが、自分が追い出したジークを、連れ戻すなど論外だった。
「……お願い、します」
国王はその場で膝をつき、深々と頭を下げる。
「ぷっ……! ぎゃーーーーはっはっは! おいおいおめーら見たかよぉ! 国のお偉いさんがオレ様達に土下座してるぜぇ~! ちょーだせえ!」
ゴロツキどもに馬鹿にされ、嘲笑される。
屈辱だった。だが、それでも、今この状況を打破するために、恥を忍んで頭を下げたのである。
「そこまでされちゃ引き受けねえわけには、いかねーなぁ」
餓狼達は武器を手に、詰め所を出て行く。
「おいおっさんたち、たんまり報酬はもらってくぜぇ~?」
猛吹雪の中、傭兵団たちは城に近づく。
『なっ、なんですあなた方は!? やめてください! 私は身ごもっているのです! 早く医者を!』
だが氷竜の言葉は人間には届かない。
「っしゃぁ、ひっさびさの竜討伐だ! 野郎ども! あいつを思う存分痛めつけてから、ぶっ殺してやろぜぇ~!」
彼らが武器を手にする。
鎖つき鉄球、弓矢、杖。
「さぁ狩りの時間だぁ! 死ねぇえええええ!」
彼らが氷竜めがけて、一斉攻撃を仕掛けた……そのときだった。
ガキンッ……! と、結界魔法によって、彼らの攻撃は防がれた。
「やめろ!」
氷竜の前に、1匹の飛竜がいる。
その背に乗っていたのは、獣ノ医師ジークだった。
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