37.魔法使いの弟子との決闘
ハイエルフの王リヒター、その弟子のリフィルと出会ってから数分後。
森の中にて。
「勝負だ人間! 貴様をけっちょんけっちょんにしてやる!」
小柄な少女リフィルが、顔を真っ赤にして言う。
「すまないねジークくん。ウチの不肖の弟子が、こうしないと君を認めないというもので」
さてなんでこうなっているのかというと。
1.リヒター王からの勧誘を断る
2.ならばエルフ国と獣人国の間で同盟を結びたいという
3.同盟国となれば獣人国にとってもメリットになるし、エルフ国にとっては俺という人材を間接的に手に入れることができてwin-winの関係。
4.しかしリフィルが反対した。
という次第。
「こんな人間のために、王が頭を下げる必要はありませぬ!」
「彼女は優秀な魔導師なのだが、少々視野が狭いのだ。世界の広さを教えてやってくれないか?」
別に決闘をする必要性は感じないが、同盟を組めば雇い主であるソフィア王や獣人のみんながより豊かな生活を送れるしな。
「わかった。決闘を受けよう」
俺とリフィルは、少し離れた場所で相対する。
「逃げずに挑んだことは褒めてやろう。しかしこの妖小人であるワタシに魔法力でかなうとでも本気で思っているのか?」
妖小人。
確かエルフについで魔法の力に長けた種族だって聞いたな。
「さっさと始めようぜ。仕事中なんだ今」
「……偉そうな口を! お望み通り葬り去ってくれる!」
リフィルが懐から杖を取り出し、俺に尖端を向ける。
「風よ! 【風刃】!」
詠唱を短縮し、風魔法を放つか。
なかなかやるじゃん。
だが飛んできた風の刃を、しかし俺はその場から動かずに避けて見せた。
「な、なぜ避けない!?」
「おまえに当てる気がないのは、殺気を読んでわかってたしな」
「なるほど、当てる気のない攻撃をわざわざ避ける必要はないのか。さすがジークくん」
感心したようにリヒター王がうなずく。
「い、今のはほんのお試しだ! くらえ! 【風烈刃】!」
俺を中心として、嵐が発生する。
「どうだ! 嵐と風の刃による中級魔法! ズタズタに切り裂かれるがいい!」
パァンッ……! と突如として風がやむ。
「そ、そんなバカな!? 中級魔法を打ち消しただと!? まさか反魔法!?」
「いや、普通に手で払って」
「なるほど、魔法には魔力の核となる部分が必ず存在する。それを的確に見抜いて潰したのだ。見事な慧眼だ。さすがジークくん」
うぐぐぐっ、とリフィルが歯がみする。
「リフィル、これで十分に、彼が優れた魔法使いであることがわかったでしょう?」
「ま、まだです師匠! 第一この男は! まだ自分で魔法を一度も使っておりません!」
別に魔法を使うほどでもなかったしな。
「飼育係ごときに、我らのような高度な魔法は扱えぬのですよ!」
「別に使えるけど」
「では見せてみろ!」
「ああ。【絶対零度棺】」
その瞬間、周囲いったいに冷気の爆発が起きる。
それは広範囲に効果を発揮し、森の木々を一瞬で氷漬けにした。
ぺたん……とリフィルがしゃがみ込む。
「きょ、極大魔法を……詠唱無しで放った……だと……?」
俺はすぐに魔法を解く。
「これで彼の実力がわかったでしょう? リフィル。彼は魔法を打つ際に、森にいた全生命体に結界魔法すら使った。無論、あなたにもです」
「そんな……凄すぎる。人間業じゃない……。でも、どうしてワタシにまで結界を?」
「当たり前だろ。女の子が、体冷やしたら大変だからな」
その瞬間、リフィルの顔が、ボッ……! と真っ赤になった。
「……はじめて、女の子扱いされた」
「え? なんだって?」
「う、ううぅううううるさいうるさいうるさぁああああああい!」
フンッ……! と彼女が顔を背ける。
「やはりジークくんは素晴らしい人材だ。是非とも我が国に欲しい」
「いやだから獣人国の人間だから、無理だって」
「ええ、存じておりますゆえ、同盟を是非とも結ばせていただきます」
その後ソフィア王のもとへ連れて行くと、彼女は快諾。
こうして、長い獣人国の歴史のなかで、史上初、他国との同盟関係が結ばれたのだった。
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