35.国王、冒険者達から見捨てられる
一方その頃、国王は宰相を引き連れ、王都冒険者ギルドを訪れていた。
ギルドマスターの部屋にて。
「まったく、なぜ一国の王が、こんな場所に足を運ばねばならぬ……無礼だとは思わぬのか!」
「まったくですなぁ陛下! 彼奴ら今忙しく、城に来る暇もないとのたまいます。無能どもめ!」
さてなぜ彼らがここにいるのか。
現在、王都は混乱の渦中にあった。
それは国が国防用に飼っていた使い魔(魔獣)達が、言うことを聞かなくなったことをきっかけとする。
魔獣達の対処が騎士だけでは追いつかず、ついに民間(冒険者)に討伐依頼を発注した。
だが一向に、魔獣達の数が減らないことに腹を立て、こうして国王が文句を言いに来た次第だ。
「待たせてすまねえな国王さん」
冒険者ギルドのギルドマスターが入ってくる。
40代の精悍な顔つきの男だ。
「遅い! 国王を待たせるとは何事か!」
ギルマスは不愉快そうに顔をしかめ「……てめらのせいだろうが」と小さくつぶやく。
「それで、何のようなんだ? 報告はそっちの宰相さんにしてるけど?」
「それについてだ。なぜ魔獣どもの数が減らない」
「貴様らがサボっているのではないかっ?」
ギルマスは、はぁ……とため息をつく。
「サボってねえよ。こっちはギルド総出で対処に当たっている」
「ならばどうして王都に平和が訪れない?」
「騒ぎの規模に対して、人の数が足りてねえんだよ。特に今はな」
ギルマスが説明する。
王都が誇るSランク冒険者パーティ【黄昏の竜】が離脱した。
それを皮切りに、多くの冒険者達がここを出て行き、獣人国冒険者ギルドへ流れて行っているという。
「なっ、なぜだ!? なぜそのような事態になっているのだァ……!」
「そりゃてめえらのせいだろうが!」
ガンッ……! とギルドマスターがソファを蹴飛ばす。
「自分たちがまいた種である魔獣討伐をギルドに依頼したくせに、早くどうにかしろと文句ばかり! さらにランクの低い冒険者までかり出させる始末! これで逃げないほうがどうかしてんだよ!」
依頼主である国王たちが、無茶をさせるせいで、冒険者達には大きな負担をかけていたのだ。
「こ、国王に対してなんだその態度は!」
「黙れ無能! てめえらのせいでギルドも国民もみんな迷惑してんだろうが!」
「なっ! なぁっ!? む、無能だとぉ!」
国王が顔を真っ赤にして立ち上がる。
「ふ、不敬であるぞ! し、死刑だ! この男を死刑にしろぉ!」
と声を荒らげたそのときだ。
「ふざけんなー!」
ばたんっ! とギルマスの部屋のドアが開き、たくさんの冒険者達が流れ込んできた。
「ギルマスになんて酷いこと言うんだ!」
「この人は俺たち冒険者のために、必死で働いてくれてる! 口ばっかりのてめえら無能とは違ってな!」
多くの冒険者達が、国王達に怒りをぶつけてくる。
「さ、下がれ無礼者ども! 貴様ら全員を死罪にしてもよいのだぞ!?」
そう言う宰相の襟首を、ギルマスが掴んでひねりあげる。
「無礼はどっちだ! 無能ども!」
ぶんっ! とギルマスは宰相をボールのように投げ飛ばす。
ドガンッ! と壁に埋まって、気絶した。
「ひぃ……!」
国王は青い顔をして震え上がる。
鍛え抜かれた冒険者達に、非力な国王が太刀打ちできるわけがない。
「わ、わしを殺したらそ、それこそ極刑だぞ!」
「誰がてめえら屑を殺すかバーカ。……もういい、あんたらにはうんざりだ」
ビシッ、とギルマスが国王に指を突きつける。
「おれたち冒険者ギルドは、あんたからのクエストを破棄する」
「なっ!? そ、そんな横暴、許されると思っているのか!」
ふんっ、とギルマスは小馬鹿にしたように言う。
「うるせえ。さっさと出て行け。……おい、このバカどもを放り出せ」
冒険者たちはうなずくと、宰相と国王を持ち上げ、建物の外へと放り投げる。
「二度と来るんじゃねえバーカ」
「こ、国王にそんな態度取っていいと思っているのかおまえらぁ……!」
「あいにくと俺ら冒険者は外からやってきた人間でね。おまえの国民じゃねえんだよボケが」
バタンッ! 扉が閉まる。
「お、おい! 開けろ! ま、魔獣はどうする!? このまま放置なんて無責任だろ! おい! おい! おぉおおおい!」
……だがいくら国王が叫んでも、冒険者達は二度と、彼らの言葉を耳にしなかった。
「へ、陛下ぁ~……どういたしましょう」
「う、ううううぅうううるさい! 黙れ! そんなのおまえが考えろ! それがおまえの仕事だろうが! くそっ! くそぉっ!」
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