34.女子たちに愛されすぎて困る
俺たちが魔の森から帰ってきて、2週間ほどが経過した。
ある日の朝。
俺が目を覚ますと、隣で妹のチノが眠っていた。
「おはようございます、兄さん♡」
蒼銀の美少女チノが、うれしそうに言う。
「チノ……おまえまた俺のベッドに入ってきたのか?」
「申し訳ありません。最近めっきり寒くなってきたもので♡」
秋も深まりそろそろ冬になってきた。
朝夜は本当に寒い。
「まったく、おまえはいつまでも甘えん坊だなぁ」
「えへへっ♡ 兄さんのぬくもり♡ 最高です♡ 大好きです♡」
『ちょっとちょっと何してるのよー!』
がばっ! とチノの首根っこを掴んで、持ち上げる。
地竜のちーちゃんが、そのままチノを放り投げる。
「何をするのです、地竜」
『ジークはアタシのジークなの! 勝手に近づくんじゃないわよ!』
……さて。
本来なら魔獣の声は俺にしか聞こえないはず。
だがどういうわけだか、俺の加護(治療)を受けた魔獣は、こうして他者とコミュニケーションを取れるようになるのだ。
「魔獣としゃべれるようにする兄さんの力はさすがですが、このメストカゲがうるさいのは厄介ですね」
「おいーっす! ジーク! おきてっかー!」
そこへ入ってきたのは、Sランク冒険者のリズベットだ。
リズは俺に近づいてくると、むぎゅーっと抱きついてくる。
「なぁなぁ♡ 今日ウチ暇なんだ。王都を案内してくれねーか? 引っ越してきたばっかりでこの辺のことわっかんねえし」
リズは冒険者としての拠点を、俺が元いた国から、この獣人国に移したらしい。
その方が俺を勧誘しやすいからだそうだ。
住む場所も王都の宿屋を使っている。
本来この国は人間の立ち入りを許可されていない。
だが、俺の知り合い(紹介)ということで、特別に許可が下りたのだ。
「別に案内ならいいけど、俺もよくわからないぞ、来たばっかりだし」
「ならよー、一緒に観光がてらデートしようぜ♡」
「『ちょっとまったー!』」
ちーちゃんおよびチノが、リズを俺から引き剥がす。
「何を勝手に兄さんとのデートを決めているのですかっ」
『ジークはアタシのよ! アタシの許可なくデートなんて許さないわ! きー!』
「べっつにジークは誰ものもでもねーだろ~。ならウチとデートしてもいいじゃあねーか♡」
「『よくなーい!』」
ぎゃあぎゃあ、と騒ぐチノ達。
そこへ、ドアが開き、俺の副官・猫耳美少女ミントが入ってくる。
「ジーク様♡ お召し物をお持ちいたしました」
「お、おう……ありがとう」
ミントは単なる部下なのだが、こうしてあれこれと世話を焼いてくれている。
ニコニコしながら、ミントが俺の前までやってくる。
「さぁ♡ おきがえしましょう」
「「『ちょっとまったー!』」」
ミントを2人と1匹が引き剥がす。
「兄さんの着替えは妹の私がやりますっ」
『だいいちあんたメイドでもなんでもないでしょ!』
「ウチが着替えさせるからよぉ、着替えかしな」
「いいえ! ジーク様の身の回りのお世話はわたしの役目です!」
さらにぎゃあぎゃあ、と騒がしくする彼女たち。
『おにーちゃんっ! おはよー!』
神獣ハクがぴょんっ、と俺の胸に飛び込んでくる。
「おー、ハク。おはよう」
『おはよ~♡ ジークきょうもかっこいー♡ すきすき~♡』
ちゅっちゅ、と子犬が俺にキスをしてくる。
「なんだいなんだい、モテモテじゃあねえかジーク。さすがだぜ、ウチも鼻が高いよ♡」
ケラケラ、とリズが楽しそうに笑うのだった。
☆
冒険者リズベットが率いる、Sパーティが獣人国を拠点にした。
そのウワサは瞬く間に広がった。
獣人国と言えば、裕福であること、そして人間の立ち入りが禁じられていたことで有名だった。
しかしリズベットが獣人国に移ったことで、自分もまた……と数多くの冒険者達が、王国から獣人国へと流れていった。
魔獣たちが手をつけられなくなり、暴れ回っているこの状況下。
それを討伐する冒険者たちが今一番必要とされてるなかでの。著名な冒険者パーティたちの流出。
……その知らせが、宰相の耳に届くこととなる。
【※読者の皆さまへ とても大切なお願い】
「面白い!」
「続きが気になる!」
「もっともっと国王たち『ざまぁ』されろ!」
と思っていただけたら下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に変えて、作品への応援おねがいいたします!
面白かったら星5つ、
つまらなかったら星1つ、素直に感じた気持ちで全然かまいません!
ポイントは今後の更新継続のとても大きな励みになりますので、なにとぞ、ご協力をお願いします!