29.エルクァス、竜たちから報いを受ける
一方その頃、竜殺しエルクァスは、夜の森をひとり走っていた。
「はぁ……! はぁ……! よしっ、追手は来ないようだなぁ!」
邪悪に笑うエルクァス。
彼は数日前、獣人国を襲撃した。
だが獣ノ医師ジークの手によって撃退、その後逮捕されていた。
牢屋の中で彼は気づかれないよう、壁抜けの魔法術式を、牢屋の壁に描いていた。
そして今夜、ようやく完成し、脱獄した次第である。
「あの畜生どもが! よくも僕様をあんな牢屋の中にぶち込みやがったな! 絶対に許せない! 覚えてろ復讐してやるからなぁ!」
と、そのときだった。
『ここにいたか、愚かなる長耳猿よ』
ばさりと、エルクァスの目の前に巨大な何かが下りてきた。
月明かりに反射され、美しい光を放つその竜は、【金剛竜】だ。
「誰かと思えば僕様にやられたトカゲじゃあないか」
『……おお、われの声が届くようになったか。これもジークの力、さすがだな』
ひとりごちる金剛竜に対し、エルクァスは余裕の表情で言う。
「また殺されに来たのかぁ?」
エルクァスは獰猛に笑う。
彼は金剛竜を脅威と思っていなかった。
先日自分が瀕死まで追い込んだ、ただの獲物だと。
『違う。貴様に報いを受けてもらおうと思ってな』
「はぁあああん? 報いだってぇ。やってみろよ、また返り討ちにしてやるぜ!」
エルクァスは柏手を打つと、彼の手に魔法弓が出現する。
「さぁこの間の続きをしよう! 僕様の獲物になりな、トカゲ野郎!」
矢を放とうとしたそのとき、ぼとり、と腕が落ちたのだ。
「へぁ……?」
地面に転がっている自分の両腕を見て、エルクァスは呆然とする。
「腕、が。腕がぁああああああああああああ!」
いつの間にか切断されていた。
闇の奥にいるのは、小柄な竜だった。
全身が刃物となっているその竜が、すさまじい速さで飛翔し、エルフの腕を切り割いたのである。
「か、回復、回復をぉ!」
エルフ族は魔法の扱いに長ける。
男であるエルクァスでも、強力な治癒魔法が使えた。
だが、いくら魔法を発動させても、斬られた腕が元に戻らない。
「どうなってるんだよぉおおおお!?」
『貴様は神を傷つけたのだ。神罰をその身に受けたのだよ』
魔法が使えなくなるという罰を、天より与えられたのだ。
『その腕では二度と矢を放てまい。弓も魔法も使えぬエルフなど、ただの耳の長いサルと同じだな』
「こ、この! ぼ、僕様を侮辱したなトカゲの分際でぇ!」
そのときだった。
『わが主を侮辱したな、蛮族が』
エルクァスは気づく。
金剛竜の周りには、無数の竜たちが佇んでいることに。
高レベルの竜がすさまじい数いて、エルクァスを囲っていた。
「あ……ああ……」
竜たちの放つ迫力と殺気に、エルクァスは完全に腰砕けになっていた。
「ご、ごめんなさい! 許してください! お願いします!」
両腕を失った彼は、竜の前で膝をつき、頭を下げる。
「命だけはどうかお助け下さいぃいいいい!」
だが竜たちは怒りの表情を浮かべて、咆哮をあげる。
『そうやって命乞いした竜たちの声に、貴様は一度でも耳を貸したか?』
竜たちが口を開き、炎をそこにためていく。
「い、いやだ! やめて! やめ、」
竜たちはいっせいに、エルクァスめがけて、竜の炎を放つ。
「うぎゃぁああああああああああああああああ!」
数千度の炎を浴びて、エルクァスは苦悶の表情を浮かべながら焼死した。
あとには塵一つ残らず、この世から退場したのである。
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