25.宰相、混乱する城内で板挟みになる
ジークが奇跡の力を覚醒させた、一方その頃。
宰相は国王と別れ、自分の執務室へと向かっていた。
「くそっ! 寒いな畜生……!」
現在国王達のいる王城は、妹魔導師チノによって氷漬けにされていた。
宮廷魔導師が総出で氷を溶かそうと頑張っているのだが、一向に溶ける様子がない。
よほど強力な魔法をかけられたのだろう。
「なんだか最近妙に不幸が続く……! これも全てジークのせいだ! くそっ! あの畜生係め……! いなくなった後も人を不愉快にさせやがる……!」
ジークは宰相に不利益などいっさいもたらしていないのだが、彼はジークにすべての責任を押しつけていた。
「とりあえずジークだ。あやつをまたここへ呼び戻し、こき使えば万事解決する。あいつを連れ戻すためにはどうするか……」
ふむ、と考え込む宰相。
「そうだ、エルフの長の息子には、竜殺しという強力な弓使いがいると聞いた。やつを使って妹のチノを誘拐させ、適当な冤罪をふっかけ牢屋にぶち込むのはどうだ?」
にやぁ……と邪悪に宰相が笑う。
「妹の刑期を減らす代わりにジークをこき使わせる。くくく……! 良いアイディアではないかぁ~? よしっ!」
宰相が執務室のドアを開ける。
エルフの長あてに手紙を書こうかな、とのんきに思っていられたのは……ここまでだった。
「宰相! やっと帰ってきた! 何やってたんですか!?」
どたばた、と大臣たちが宰相に詰め寄ってくる。
「なんだ騒々しい。私は忙しいのだ。火急の用事以外は後回しにしろ」
「すべて火急の用事です!」
「城が! 大変な騒ぎになっているんです!」
「は……?」
大臣達が報告書類をドサッ……! とデスクに置く。
「なっ!? なんだこの書類の山はぁ!?」
「すべて城内部で起きているトラブルについての報告書でございます」
「トラブル!? なぜだ!?」
バッ……! と宰相が書類に目を通す。
今、下記のような問題が発生しているらしい。
・郵便用の使い魔ふくろうが、城の急激な環境変化に耐えきれず死滅した。
・城内を防衛する役割の魔獣達が、城の急激な環境変化に耐えきれず、暴走を始めて手がつけられない。
・王都外壁を守っていた使い魔の魔獣達が、いっせいに外へと飛び出していった。
etc.……
「ほ、本当にこれ、全てが実際に起きていることなのか!?」
バタンッ! と宰相の部屋のドアが開く。
ドドドッ! と衛兵やら魔導師やらが山のようになだれ込んできた。
「宰相! ふくろうが死んで郵便が送れません!」
「使い魔のサラマンダーが暴走し何十人もの負傷者が!」
「防壁を守っていたはずの魔獣が、壁を破壊しだしましたぁ……!」
大混乱を起こす部下達を見て、宰相はようやく、書類上で起きていることが真実であると悟る。
「だとしたら……まずい! まずいぞぉ!」
この大量のトラブルを、すべて解決しなければならない。
しかもどれも一朝一夕でどうこうなるような内容じゃない。
……そして、そのトラブルをいっきに解決する方法と、このトラブル達の原因は、すべて同一人物だった。
ジークだ。
彼がいればトラブルは全て解決。
彼がいないからトラブルが起きている。
……つまり、ジークを追い出した者の責任であった。
「「「宰相! 指示を!」」」
「う、うるさいうるさぁあああい! 出て行け! 今は出て行け! あとで指示を出す!」
部下達を閉め出すと、宰相はため息をつく。
「駄目だもう駄目だ。なにをどうしてもジークが必要になる! 国王に相談だ!」
宰相は部屋を出ると、駆け足で王の下へと向かう。
「王よ! ジークに帰ってきてもらえるよう、頭を下げるべきです、今すぐ!」
城のパニックぷりを報告したのだが、しかし国王はフンッ……! と鼻を鳴らす。
「ならん、なぜこのわしが畜生係に頭を下げねばならぬ」
「し、しかし現に今彼がいないことで大パニックになってます! 今は小規模なトラブルですんでいますが、これは火種、確実に被害は大きくなっていきます!」
「ええい! うるさいうるさいうるさぁあああい!」
国王は宰相を蹴飛ばすと、つばを吐き捨てていう。
「ジーク抜きでなんとかしろ!」
「なんとかって……どうすれば!?」
「それを考えるのがおまえの仕事だろうがぁ……! とにかく、ジークに頭を下げるなど論外! 追い出したわしの判断ミスと思われるではないかっ!」
宰相は部屋から閉め出される。
「宰相! 指示を!」「城のパニックをどうすれば!?」
上と下に板挟みになった宰相は、頭を抱えて叫ぶ。
「どうしてこうなったぁああああ!」
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