24.習得【神の手】〜最強の治癒魔法〜
俺が竜殺しの英雄とやらを撃退してから、10日ほど経ったある日のこと。
獣人国の外れにて。
『ありがとう、ジークよ。おぬしのおかげで一命を取り留めた。深く、感謝する』
金剛竜が、深く頭を下げる。
「良いってことよ。元気になってよかったな」
『ジーク。魔獣を悪と見なし、嬉々として倒す者の多いこの世界に置いて、ただひとり獣を癒す誇り高き医師よ。われはおぬしを、心から尊敬するぞ』
「お、おおげさだなぁ。照れるって」
『このカリはいずれきちんと返す……む?』
森の方を竜が見やる。
「どうした?」
『ジークよ。血のにおいだ。気をつけるが良い』
俺は気になって、金剛竜とともに森の中へと入っていく。
「う……うう……」
小さな女の子が、うつ伏せに倒れて、脂汗を流していた。
出血が激しく、彼女の周りに血の池ができている。
「た、大変だッ! すぐに治癒を……あ」
俺は、気づいた。
もう手遅れだと。
「そんな……」
女の子の背中に、巨大な穴が空いていた。
上半身と下半身とが、完全にちぎれている。
「すまない……俺の力じゃ、君を救えない……」
俺は獣ノ医師。動物を治すすべは持ち合わせている。
だが傷付いた人間を治す技術は持っていない。
治癒魔法は男の俺では、威力が弱い。
「ごめん……」
『顔を上げろ、ジーク。まだ手はある』
力強く、金剛竜が言う。
『治癒魔法を使うのだ』
「けど……俺の治癒じゃ、せいぜいかすり傷を治す程度。こんな致命傷、なおせるわけが……」
だが金剛竜は首を振る。
『できる。今の進化したおぬしならば』
「進化……?」
『大丈夫だ。自信を持て。おまえは多くの命を救ってきた』
それは動物に限った話だ……と反論しようとして、やめた。
神獣だという金剛竜が太鼓判を押してくれたのだ。
信じてみよう……俺の、秘めたる可能性を。
「すぅ……はぁ……。よし!」
俺は両手を彼女にかざす。
消えゆく命をすくい上げるように、優しく、俺は治癒魔法を発動させた。
カッ……!
と俺の手がまばゆい光を放つ。
「なっ、なんだこれっ!?」
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【百獣ノ医師】のユニークスキル【神の手】を習得しました。
【神の手】
→世界最高峰の治癒術。
あらゆる傷を治し完全治癒させる。
死以外の状態異常をなおす。
※注)対象は人間、動物などの生命体。
魔獣・魔族には治癒魔法が通じないため、逆に即死魔法となりえるので注意。
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黄金の輝きは女の子を包み込むと、一瞬で消える。
「う……うう……ここは……?」
うっすらと目を覚ますと、女の子は立ち上がった。
「だ、大丈夫かっ!?」
俺は彼女の肩を掴んで揺する。
ちぎれた体は元通りになり、失った血液すらも元に戻っていた。
「あ、あなた様が治してくださったのですか?」
『そうだ。娘よ。瀕死のおまえをこの男が治したのだ。感謝するが良い』
じわ……と女の子は目に涙を浮かべると、深々と頭を下げる。
「ありがとう! ありがとうございます! あなた様は命の恩人です!」
『うむ、よもやこれほどまでの治癒の力を発現させるとは。さすがジークだ』
俺は自分の両手を見て、呆然とつぶやく。
「瀕死の重体を治すほどの治癒魔法って……ヤバすぎるだろ、これ」
『それを可能とするほどのポテンシャルが、元よりおぬしには備わっていたのだ。神の奇跡ではない。おぬしがたくさんの命を救ってきたという経験が、その手を神の手へと進化させたのだ』
俺は自分の両手を見やる。
神の手。全てを癒す奇跡の力。
こんなすげえ力が、俺に秘められてたなんてな。
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