237.
ジャマーとの最後の戦い。
やつの作った空中要塞が、振動しだした。
妹のチノの集団転移魔法で、その場にいた俺たちは全員脱出する。
チノの取り出したホウキの上に乗っかり……俺は見た。
「なんじゃ……ありゃ……。巨人?」
空中要塞だったはずのものは、巨人へと変貌を遂げていた。
レンガなど鉱物を積み上げて出来た感じの見た目をしてる。
しかし……。
『ぐろろおろおぉお! どうだぁああああ! これぞ、人造生命体の極地! 人工生命体巨人だ!』
「人造生命体……」
チノがつぶやく。
「錬金術を応用して作られる、人造の生命体。しかしあそこまで巨大な物は作れないはず……」
『ぬはっははあ! ジークぅ! 貴様の力を使ってるのだぁ!』
俺の力……つまり。
「神の手か?」
『そのとおりだぁ! 神の手をラーニングし、再現できるようになった! 圧倒的な神の力で、こうして巨大な生命を生み出しただのぁ!』
ジャマーは恐らくあの人工生命体巨人の中にいるのだろう。
『ジークぅ! 貴様はもうおわりだ! 神の力、そして神に対抗しうる力を持つわしに、敵はない!』
「……神の力、か」
思えばこの力で、たくさんの人を救ってきた。
瀕死の重体の獣も、死んでしまった命も、治すことが出来た。まさに、奇跡の力。
その力が今、俺の前に立ち塞がっている。
神の力が強大であることは、同じく使っていた俺が一番よくわかってるのだが。
俺は……恐怖を感じていなかった。
『なんだその顔は! 貴様の力が通じないのだぞ! もっと絶望しろぉ!』
俺が動揺しない様にいらついたのか、ジャマーが声を荒らげる。
ふっ……。
「悪いな、ジャマー。俺は絶望しないぜ。なぜなら……」
『しねえええええええええええええええええええええええ!』
巨人が手を振りかざし、俺を叩き潰そうとする。
ばきぃんっ!
『なにぃ!? 神の手による結界!? 馬鹿な……神の力は通じないはず!』
「残念だったな、ジャマー。これは神の力なんかじゃあねえんだわ」
『なっ!? き、貴様ぁ……!』
巨人の一撃を払ったのは……。
俺の親父、グリシャだった。
『グリシャぁ……! なぜだ、貴様は生ける屍! わしの命令には絶対服従なはずだろ!?』
本来なら、親父はジャマーに逆らうことはできない。
しかし……。
「おれはもう、生ける屍じゃあない」
『なにぃいい!?』
「ジークが、新しい命を吹き込んだんだ。おれは……もう生ける屍でなくなり、ただの人間に戻ったのだ」
親父に新しい命(神の魔力)を吹き込む。
そうすることで、魔獣である生ける屍から、人間へと戻った……というか、進化したのだ。
「なるほど、存在進化! 生ける屍が進化したことで、人間になったのですね!」
「チノのいうとおりだ」
魔獣には、外部から魔力(力)を吹き込まれると、存在が進化するという性質がある。
ちーちゃんが人間の姿になれたように、魔獣(生ける屍)だった親父もまた、人間になれたのだ。
「ジャマー。確かにあんたは強力な力を手に入れたらしいが……悪いな。俺にも、強い力があるんだ。なあ、みんな!」
俺の周りには、獣たちが集まる。
空中要塞にいた、魔獣たちが、一同に介している。
この大空いっぱいに、獣たちがあふれかえっていた。
「さぁジャマー。覚悟しろ。神の力と、俺たちの力、どっちが強いか教えてやるよ!」