234.
ジャマーとの最後の戦い。
空中要塞に乗り込んだ俺たちの前に立ち塞がるのは、ジャマーが作った人造生命体。
魔獣たちがそれらの相手をしてくれる隙に、俺は要塞の内部へと進入する。
「ジーク、ジャマーの居場所は見当がついてるの?」
「ああ、だいたいな」
俺は要塞の壁に手をついて、とんとん……と壁を叩く。
打診法。
叩いたときの反応や、反響音で、体内の異常を調べる方法。
そこに神の手が加わることで、生物だけでなく、こうした無機物の内部構造も瞬時に把握できる。
ようは、生命を探知できるのだ。
「最奥部に、でかい生命反応がある。多分それがジャマーの秘蔵っ子だろう。となると、近くにジャマーがいる」
……それにおそらくは、その秘蔵っ子とやらを守るため……。
と、そのときである。
どがんっ……!
『わわわ! なにごとー!?』
『じーく、うえ!』
ハクとシアが上を見やる。
そこから現れたのは……。
親父、グリシャ・ベタリナリだった。
「……親父」
「ジーク、やはり来たか」
どうやらジャマーに命じられて、俺の足止めに来たようだな。
「ジーク。できる? グリシャと戦うこと」
ちーちゃんが覚悟を問うてくる。
親父。
俺を、育ててくれた大事な人。
一度目の戦いでは、動揺してしまい、まともに向き合うことが出来なかった。
……でも、今は違う。
俺のせいでたくさんの命を失うところだった。
俺の判断の遅れが、大惨事を引き起こすところだった。
「親父……」
俺は、決めたのだ。
この手で全ての命あるものたちを、助けると。
そして……。
「俺は、あんたと戦うよ。邪魔するならぶっ飛ばす」
「そうか……」
「ああ、そんで……あんた【も】、救ってみせる!」
「!」
俺は全ての命を救うといった。
それは、親父も含まれている。
「俺は決めたんだ。大切な命は、俺が守るって! 親父、あんたもそこに入ってるんだ!」
大勢の命か、親父の命か。
どちらかを選べと言われ、俺は全てと答える。
この世界にある、生きとし生けるもの、すべてを救う医師……。
「それが、ジーク・ベタリナリだからだ!」
俺の啖呵に、親父が目を細める……。
そしてうなずいて、構える。
「今のおれは、ジャマーの傀儡だ。命令には絶対服従だ。だから、手加減はせぬぞ」
「わかってる。かかってこい、親父! 最初で最後の……親子げんかだ!」
今まで俺は親父と、殴り合いのケンカなんて一度もしてこなかった。
これが最初で、最後だ。
「いくぞジーク!」
「ああ! こい!」
ダンッ、と俺たちは地面を蹴る。
そして、拳がぶつかり合う……。
『最終進化が始まっております。進行具合40%……』