表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

232/241

232.



 俺とちーちゃん、そしてハク、シアは、エルロンの背中に乗り、空へと向かっていた。


 エルロンは竜の姿で言う。


『超魔王とやらは、我との戦いの最後に、空中要塞にて待つと言って逃げよったのだ』

「つまり……その空中要塞とやらに、ジャマーがいるんだな」

『然り。神竜、そして空を飛ぶ獣たちが手分けして、その要塞とやらを見つけることに成功した』


 俺はエルロンの隣を見ると……。


「ぴゅういい! じーくぅ! あっちだよぉ!」

「ハーピィ……それに……」

『『『兄貴ぃい!』』』

 

 俺がかつて助けたハーピィや、元々俺の友達だった飛竜たち。

 彼ら空飛ぶ獣たちが、敵の居場所を見つけてきてくれたのだ。


「みんな……すまない」


 俺とジャマーとの因縁に、皆を巻き込んでしまった……。

 しかし飛竜たちは笑顔で首を振る。


『気にしないで兄貴!』『おれらは好きで兄貴を手伝ってんだ!』

『そうだそうだ! 今まで兄貴にいっぱい色々してもらったんだ!』

『だから……これは恩返しだ! 気にしないでおくれよ!』

「ぴゅいー! きにしなーい!」


 ……恩返し、か。

 俺はこの手でたくさん、命を救ってきた。


 それが今、こうして返ってきている。

 俺が、この手でやってきたことは……無駄ではなかったんだ。


「ありがとう……みんな!」


 やがて、飛竜たちに導かれ、俺たちは雲の間に、巨大な要塞を見つける。


「何あれ! 緑色の……要塞?」


 ちーちゃんが目を丸くしながら、空飛ぶ要塞を見てつぶやく。

 不思議な、翡翠色の岩石を、削って作ったような無骨な要塞だ。


『おお、あれは我ら竜王国スカイ・フォシワにある、空飛ぶ鉱石、飛行石で作られておる!』

「飛行石……?」

『文字通り空を飛ぶ石のことだ。竜王国スカイ・フォシワにしかない珍しい石……』


 なるほど、ジャマーめ。

 いつの間にか、竜王国から石を奪っていたのか。


『ジーク! 見て! なんか……筒がこっちむいてる!』


 神獣の娘、ハクが、指さす。

 要塞の壁には、いくつも門があって、そこから銃口が向いていた。


「大砲だ! みんな、下がってくれ!」


 俺は飛竜たちに言う。

 どどん! と大砲が発射され、無数の弾丸が飛んできた。


「もう……俺の友達を、誰も傷付けやしない!」


 ちーちゃんたち魔王国民の、きずついた姿が脳裏をよぎる。

 俺は片手を前に突き出し、神の手を発動させた。


 光の障壁が目の前に展開される。

 しかし……。


「ジーク危ない! 弾丸が……障壁を通り抜けてきてるわ!」


 なんだって?

 確かに、俺が展開した光の壁を、弾丸がすり抜けてきた!


 ……そうか。

 マケーヌが魔王国に入ってきたときから、変だと思ったんだ。


 魔王国には、国民を邪悪から守る障壁が張られていた。

 でも、やつが入ってきた。つまり……。


「神の手を……攻略するすべを、やつらが考案してきたってことか……!」


 くそっ、厄介だ……


『問題ない! 先生! 我ら空の民に、任せろぉう! いくぞ!』

『『『おー!』』』


 エルロンと空飛ぶ獣たちは、空を軽やかに飛翔する。

 弾丸の雨をするするとすり抜けていった。


「す、すげえ……」

『わははは! 我ら翼あるものにとって、空は我らの領域! あんな弾なんぞにあたるわけがない!』


 そうか、鳥は風を読む。

 空気を裂いて進む弾丸の起動を、風の流れから予測し、避けることが出来るのか……!


『先生。神の力が通じないからって、焦る必要は無いぞ』


 エルロンがニヤリと笑う。


『神の力が通じなくとも、我ら獣たちとの……キズナの力がある!』

「キズナの……力……」

『ああ! だから、諦めなくて良い!』


 ……そうか。

 神の手だけが、俺の力じゃあないんだ。


 ……そうか。

 そうだったな。


「そうよジーク。何でもかんでも、自分で背負いこまないで」


 ちーちゃんが笑って、俺の手をきゅっとつかむ。


「あなたには、あなたが救ってきた獣たちがついてるわ」


「っ。そう……だよ、な」


 神の手が宿ってから今日まで、俺は全ての問題を、自分ひとりで解決しようとしていた。

 だって、こんなスゲえ力が俺にあるんだから。


 ……いつの間にか、俺は全部を背負うようになっていた。

 それが当たり前だと思うようになっていた。


 でも違うんだ。

 俺は、ひとりじゃ何もできない。


 ちーちゃんみたいに早く走れないし、エルロンみたいに空を自由に飛べない。


 ……俺は、万能の神では無いんだ。

 神の力を宿しただけの……ただの、人間だった。


「ありがとう……。大切なこと、忘れかけてたよ」


 ぽう……と俺の体が少し光る。

 頭の上に乗っていたハクが、


「最終進化フェイズに、移行します」


 と何かをつぶやいていた。

 

【★あとがき】

なろうで連載中の有名VTuberの兄、書籍版がいよいよ発売されます!


11/15にGA文庫から発売!


予約始まってます!


よろしくお願いします!


https://www.sbcr.jp/product/4815619374/


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

★1巻11/15発売★



https://26847.mitemin.net/i778881/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ