230.
《ジャマーSide》
ジークの宿敵、ジャマー。
彼はジークたちが済んでいる大陸の、遥か上空にいた。
空に浮かぶ要塞。
ジャマーが作った魔道具だ。
要塞の中心部にて。
「何をやってるのだ馬鹿者がぁああああああああああああ!」
ジャマーは、超魔王であり、ジークの父グリシャを手で叩いていた。
ばしばしっ! と何度も、怒りを発散するかのように叩く。
「貴様は! ジークを足止めするのが目的だろうが! なにジークをいかせてるんだ? ええ、この馬鹿者が!!!!」
グリシャにジークを足止めさせ、魔王国を滅ぼすのが、今回の作戦だった。
しかしグリシャは確かにジークを足止めしていたが、それは十分とは言えず、結果、国を滅ぼすことはできなかった。
ジークの奇跡の力、そして何より、防衛に回っていた国民たちの力が、ジャマーの想定よりも凄かったからなのだが……。
それら失敗を、すべてグリシャになすりつけていた。
しかしグリシャは理不尽に叱られていても、何も言い返さなかった。
「ふん……まあよいわ。最終的にあのクソジークを、倒せればいいのだ」
魔王国を滅ぼすことよりも、ジークを殺すことのほうが、ジャマーにとっては優先度が高いのである。
「やつをわしの領域に引きずり込む算段はツケたからなぁ……まあ、いいとしよう」
算段。つまりは、ジークの妹チノのことだ。
彼女を助けるために、ジークはジャマーが作ったこの空中要塞へとやってくるだろう。
「わしの作ったものがたんまりとある、この要塞に、やつはのこのこと踏み込んでくるわけだ……くくくく! ぎゃはははは!」
ジャマーの発明品が、ジークを殺す様を妄想して、ひとり悦に浸るジャマー。
「ジークうぅ……おまえはその手があれば、何もかもが救えると思ってるだろう。だが、それこそがおまえの敗因となるんだぁ!」
ジャマーは振り返る。
玉座ともいえる椅子の裏には、1つの、巨大なカプセルが置いてあった。
「こちらの戦力は、改造人間。超魔王、そして……この奥の手。これらを用いてジークぅ……貴様を完全に葬ってやるぞぉ……」
ジャマーは、明後日の方向を見つめる。
「さぁジークぅ……いよいよ最終ラウンドだ。長かった貴様との因縁に、けりをつけようではないかぁ……!」