23.VS竜殺しの英雄
ある日のこと、俺は飛竜たちからこんな依頼を受けた。
『手負いの竜がいるっす。かなり深手を負っていて瀕死、助けてくださいっす兄貴!』
部下の飛竜とともに、俺は獣人国の外れの森へとやってきた。
地竜のちーちゃんから降りて、瀕死の竜に近づく。
「こりゃまた……派手にやられたな」
森の開けた場所に、巨大な竜が血だらけで横たわっている。
だが流血によって汚れてはいるものの、その竜鱗は、まるで金剛石のように美しかった。
『……なんだ、貴様は? あの【エルフ】の仲間か?』
竜の声が俺の頭に響いてくる。
実際にはぐるる、と威嚇しているのだが。
「だれだそれ。俺はジーク。獣ノ医師だ」
『! な、なんと……われと意思疎通できる人間など、生まれて初めて見たぞ』
「ちょいと訳ありの体でね。それより大変じゃないか。すぐに治療させてくれないか?」
竜はジッ、と俺を見やる。
警戒するのは当然だろう。
『すまぬ、助けてくれ』
「おう、じゃあちょっと待ってなすぐに治療を……」
と、そのときだった。
「おい貴様! 僕様の獲物を勝手に取るんじゃあない!」
いずこより若い男の声が響いた。
木々をかき分けてやってきたのは、とがった耳の金髪の弓使いだ。
「エルフか」
男が不機嫌そうな顔で俺に近づいてくる。
その手に弓を持ち、そして照準を、手負いの竜に合わせながら。
「どけ、愚民。その金剛竜は僕様の獲物だ」
「ああ、そうなの。悪いけど帰ってくれないか? 俺はこいつを治療したいんだ」
びきっ! とエルフ男の額に、血管が浮かび上がる。
「……貴様。愚民の分際で、この竜殺し【エルクァス】様に命令しているのか?」
「命令じゃない。邪魔だからどこかへ行けって言ったんだ」
俺は金剛竜の前に立ちふさがって言う。
「この竜は俺の患者だ」
「患者ぁ? 貴様、医者なのか?」
「ああ。獣のな。すぐ治さないと手遅れになる。早くどっかいってくれ」
弓使いエルクァスが、怒りで顔を真っ赤にし、肩を震わせる。
「……畜生番風情が、この竜殺しの英雄にそのような態度、万死に値する!」
エルクァスは手に持った弓を手に、弦を引く。
バリバリ! と激しい音を立てながら、雷の魔法矢が出現。
『に、逃げよジーク! その矢はわれの鱗を紙のように貫く!』
「もう遅い! ちぇすとぉおおおおおおお!」
雷の矢が俺めがけて放たれる。
「ほいっと」
パシッ、と俺は矢を素手で掴む。
力をこめると、矢は粉々になった。
「なぁっ!? そ、そんな馬鹿なぁああああ!?」
驚愕の表情を浮かべるエルクァス。
『なんということだ、竜殺しの矢の一撃を素手で受けるとは。信じられぬ……』
「き、き、貴様ぁ……! 何者だぁ!」
「いやだから獣ノ医師だっていってるだろ」
「う、嘘をつくなぁ! 畜生番ごときに、この僕様の矢が見切れるわけがないのだぁああああああ!」
エルクァスが矢をつがえ放って来る。
今度は途中で無数の火矢へと変わり、豪雨のように降り注いでくる。
「せやっ!」
俺は拳を全力で振る。
風圧で火矢はすべてかき消される。
「嘘だ嘘だ嘘だ! こんなの認めない!」
また矢を放つ前に、俺は一瞬で距離を詰める。
「【麻痺】」
スキルが発動し、エルクァスがばたん! と倒れる。
「そんな……多重の魔法障壁を、張っていたのだぞ。どうして……動けぬ……」
「悪いけど治療が終わるまでそうしててくれ」
「ち、くしょぉお!」
エルクァスが懐から結晶を取り出し、素手で砕く。
「転移結晶か」
「おぼえて、おけよ人間……! 貴様は竜殺しの英雄を、エルフの里を敵に回したのだ……! ただではすまぬぞぉ!」
そういってエルクァスが転移してしまう。
『竜殺しを圧倒してみせるとは。見事なり、ジークよ』
金剛竜は申し訳なさそうに言う。
『すまぬ、われのせいでおぬしに迷惑を掛けてしまって』
「気にすんな。けが人はおとなしくしてな」
俺は念話で妹に応援を呼び、手術道具を持ってきてもらう。
「すぐ治すからよ。ゆっくり寝てな」
竜は俺を見て、感心したようにつぶやく。
『竜殺しは何人も見てきたが、竜を治そうとする男はおぬしが初めてだ。ありがとう、【竜の癒し手】よ』
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神獣・金剛竜より称号【竜の癒し手】を獲得。
条件を満たしました。
ジーク・ベタリナリは【百獣ノ医師】へと存在進化します。
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