226.
……親父から告げられた衝撃的な事実。
ジャマーの命令で、魔王国が今、敵に攻められてるという。
「俺は……俺は……」
親父は魔法で操られている。
殺さない限り、生き返らせたものからの命令が消えることはない。生ける屍というものは、そういうものだって、チノが言っていた。
親父を殺し、仲間を守るか。
それか……親父を殺さないで、元に戻す術を探すか……。
迷うな。
駄目だ。
迷っては、いけないんだ!
俺は右手を挙げる。
「神の手……!」
カッ……! と光が周囲を包み込む。
だが……。
「なんだ、ジーク。今のは……? おれはこのくらいじゃ死なないぞ!」
親父が襲いかかってくる。
今ので親父が正気に戻ることを少し期待したが、無理だった。仕方ない。
多分呪詛で無理矢理動かされてるからではないからだ。
神の手はあくまで、治癒能力の延長上にあるから。呪いでないものは解除できない。
でも、いい。
俺は親父の攻撃を裁きながら、待つ。
やがて……。
「先生!!!!!!!!」
巨大な竜が、こちらに超スピードで突っ込んできた。
そして親父に体当たりを食らわせる。
「エルロン! 悪い! そいつの足止めを頼む!」
親父は殺せない。
元に戻すすべも、現状では思いつかない。
だから、時間を稼ぐ。
そのために俺は仲間を呼んだのだ。さっきのは、エルロンに危機を知らせるためのものである。
「わかった!」
エルロンは神竜王。
神竜族たちのトップ。俺に比肩する力を持つ。親父と俺は互角だった。
だから、エルロンならば、親父の足止めは可能だと考えたのである。
俺はエルロンに手を伸ばし、神の手による付与を行う。
「そいつは破壊の炎を使ってくる。光の障壁を付与したけど、気をつけてくれ! あと……できれば殺さないでくれ!」
「なんとも難題だな。だが……承知した!」
ぐっ、とエルロンが親指を立てる。
「匂いでわかる。あのものは先生、あんたの大切な人なんだな?」
「っ!」
エルロン、そこまで察することができるなんて。
すごい……そして、助かる。
「ああ。だから、頼む!」
「委細承知! 征け!」
俺はうなずいて、その場を去る。
シアが全速力で、魔王国へと俺を連れてってくれる。
「ここは通さないぞ、先生の御尊父よ」
エルロンが翼を広げ、親父をにらみつけている。
「先生から受けている大きな恩、今こそここで返すとき! さあ、かかってこい魔の物よ! 大いなる翼エルロンが、相手してやろう!」