22.趣味で作った温泉の効果がヤバかった件
ある日、俺は城の外の森に居た。
「ふぅー……いい湯だぜ」
森の開けた場所に露天風呂がある。
と言っても周りを少し整えたくらいの、自然の風呂だ。
「兄さん、どこにいるのですか、にいさーん」
「おう、こっちこっち」
妹のチノが俺の方へと近づいてくる。
「兄さん、なんですかこれ?」
「ん、余暇を利用して、趣味で作った露天風呂だ」
元いた国よりも、こっちのほうが労働条件がいい。
なにせ休日3日あるし、有給休暇もたんまり。
休みが取りやすく、しかも人員も多いので、前よりのんびり働けていた。
空いた時間で、この露天風呂を工作した次第。
DIYってやつだな。
ジッ、とチノが湯船をつぶさにみやる。
「兄さん……このお湯、とんでもないですよ。神気を帯びています」
「しんき? なにそれ」
チノは一度城へ戻って、ミントを連れてくる。
「肩こりに悩むミントさんを用意しました。お風呂に入って下さい」
「え?」
「わかりましたっ」
俺が止める間もなく、ミントがするすると服を脱ぐ。
「失礼しますっ」
弾んだ声でミントが風呂に入り、俺の隣に座る。
「ちょっ、おいおい若い女の子が知らない男にそうやすやす肌をさらすもんじゃないぞ」
「ジーク様は特別でございます」
「ええ、兄さんになら見られてもよいのです」
なぜかチノまで風呂に入っていた。
とんでもない美少女が、笑顔で素肌をさらしてくることに困惑する俺。
「あれ……この温泉……す、すごいです!」
ミントが晴れやかな表情で言う。
「わたし、胸が大きいので、毎日ひどい肩こりに悩まされていたんです。でも、肩こりが一瞬で治りました!」
「私も眼精疲労が一発で消し飛びました。さすが兄さん、趣味でここまですごい温泉を作ってしまうとは」
尊敬のまなざしを向けられるが、俺は首をかしげる。
「え、え、ただ温泉掘っただけなんだが……」
「ええっ!? お、温泉を掘り当てたですって!? これ、ジーク様が作ったのですか!?」
ミントがめちゃくちゃ驚いていた。
「なにに驚いてるんだ?」
「温泉事業には掘り当てるのに多額の資金と労力が必要となります! ど、どうやってこれを?」
「どうやってって、趣味で。一人でこう、実際に見せたほうが早いな」
俺たちは服を着て、森のなかを歩く。
縫合用の糸に針を付けて、それをぶら下げて歩く。
「兄さんはダウジングをなさっておられるのです」
「ダウジング?」
「水脈などを掘り当てる技能です。兄さんの場合は医術を応用してるようです」
「お、見つけたぞ」
くるくると針が回りだした。
俺はその場に手をついて、ぷすり、と針を刺す。
どばーっ! とお湯が噴き出てきた。
「こんな感じで湯源を見つけるんだ……って、どうしたミント?」
ぽかんと口を開いていた。
「さすが兄さん。自分のしていることがとんでもないと気づかずにさらっとやってしまうなんて」
ふふん、とチノが胸を張る。
「また次の休日に温泉2号作るかなー」
がしっ、とミントが俺の腕をつかんで、ぶんぶんと振る。
「じ、ジーク様! ぜひとも、我が国の公共事業もお手伝いいただけないでしょうか! もちろんお給金もプラスさせてもらいます!」
「え、まあいいけど。でも俺素人だぞ?」
「ご謙遜を! あなた様がいれば水源の確保、国民の利用する公共浴場をより多く作ることができます!」
よくわからんが、趣味で作ったはずの温泉が、みんなのためになるならまあいいか。
「このお湯にも神気が宿っております」
チノが噴き出すお湯を分析して言う。
「肩コリ腰痛などの蓄積された疲労を瞬時に癒す力が、この温泉には多く含まれております。おそらくは神獣と契約した影響かと」
つまりとんでもない効能の温泉を、ただで作りまくれるってことか?
なんかそういわれると、とんでもないな。
ただの趣味だったのに。
「すばらしいです! やはりジーク様は本当にすごいお方ですー!」
「あの国王は本当に愚かですね。兄さんの本当の実力を見抜けずに追放したのですから」
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