215.
「ジーク、どうしたの?」
振り返ると、人間姿のシアが立っていた。
そうか、この子はお酒を飲めないし、早く寝ちゃってたから、他の竜と違って早く目が覚めたのだろう。
「ん、ちょっと虫の知らせがしてね」
「むし?」
「なんか……嫌な予感がしてよ」
さっき、一瞬だけチノと連絡がついた。
声は断片的にしか聞こえなかったし、ノイズが混じってて聞きにくかったけど……。
「なんか、チノが……俺に何かを、訴えてきた、ような」
「気になるの?」
「……ああ」
気のせいだとほっとくこともできた。
でも……やっぱり気にはなってしまう。
「悪い、シア。ちょっと俺先に帰るわ」
「! 帰るって、魔王国に?」
「おう。エルロンたちによろしく伝えておいて」
「い、いいけど……どうやってかえるの?」
俺は浮島の端っこに立って、ひょいっと飛び降りる。
「わーーー! ジークあぶなぁああああああい!」
「お、どうしたシア?」
俺は空中に立って上を見上げる。
シアが竜の姿になって、こっちに駆けつけてきた。
『え、え、えー!? なんで空飛んでるの!?』
「とんでるっちゅーか、立ってる」
『なんでそんなことできるの!?』
「神パワーかなぁ?」
できそうだって思ったら、できたみたいな。
はぁ……とシアが大きく息をつく。
『しあ、ついてく。ジークつれてく』
「え、悪いよぉ。歩いて行くし」
『急いでるんでしょ?』
「まあなあ」
『じゃあ、しあがつれてく』
シアが俺の背中に張り付く。
ぱぁ……! と光が発生すると、翼だけがムクムクとのびてきた。
『しあ、子供。だから、翼しかでっかくできない。しあ、ジークの翼になる!』
なるほど……シアが俺の翼になって、魔王国まで運んでくれるってことか。
「あんがとなー」
『うん! まおーこくに、れっつらごー!』
「おー!」
ということで、俺は一足先に、シアと一緒に、魔王国へと戻ることにしたのだった。




