214.
神竜王の奥さん、炎竜さんは双子を身ごもっていた。
排卵困難を起こしていたけど、神の手のおかげで、無事出産。
元気な双子の竜が生まれたのだった。
さて。
その日の夜は大宴会が開かれていた。
「新しき二翼の誕生と! 我らが大恩人ジーク・ベタリナリに、乾杯!!!」
「「「かんぱーい!」」」
神竜族にまじって、俺は一緒に酒をあおる。
みんな王様に子供が生まれたことをよろこび、祝福してくれてるようだ。
そんで……。
『ありがとうございます、ジーク様!』
『我ら神竜たちの恩人……!』
とまあ、皆からチヤホヤされることになった。
うんまあ、良かった良かった。赤ん坊が無事に産まれて。
俺は恩人って褒められることより、新しい命が、何事もなく、無事にお母ちゃんお父ちゃんのもとに生まれ落ちてくれたことのほうが、うれしかったね。
「先生! 本当にありがとうなぁ……!」
エルロンが近づいてきて、がしっ、と腕を首の後ろに回す。
「またしても我が息子娘、そして大切な妻を亡くすところだった! おぬしのおかげだ! ありがとう!」
「なんのなんの、当然のことをしたまでさ」
「うぉう! 本当におぬしはいいやつだな! ますます好きになった! ちゅーしていいか!」
「よくねーよぅ」
エルロンのやつ、だいぶ酔っているようだ。
そりゃそっか、自分の子供が生まれたんだもん。うれしくないわけがない。
しばしどんちゃん騒ぎが続いた……。
そして、深夜。
神竜族たちはみんな寝静まっている。
俺はみんなが、二日酔いにならないように、神の手で解毒(アルコールを抜いておく)した。
「これでよしっと」
幸せそうな竜たちをみていると、自然と笑みがこぼれてしまう。
やっぱり、皆なかよくが一番だよなぁ。
「っと、そうだ。連絡しておくか」
診察は無事に終わったことを、魔王国のみんなに知らせないとな。
俺は通信用の魔道具を取り出して、地上にいるチノに連絡を取る。
PRRRRRRR…………♪
しかし。
「あれ? 通話がつながらんな」
夜だからか、あるいは、通信がとどかないくらい上空に、ここがあるからなのか……。
うーん、魔道具を作ってるのはチノであって、俺じゃあないからなぁ。
「でもチノのやつ、この魔道具、結構遠くからでも声が届くとかいってなかったけっけ? なら、なんで通話にでないんだ……?」
『……さん』
あれ? 出た?
「チノ? 悪いな夜中に」
しかし……。
『……さん。……すけ……い……国……大変……お……すけ……さん』
「チノ?」
ぶちんっ!
……きれちまった。
なんだろう、断片的すぎて、聞こえなかったな。