212.
竜王国スカイ・フォシワへと到着した、俺。
神竜王エルロンの奥さん、炎竜さんに異常が発生したらしい。
俺はエルロンとともに炎竜さんの寝所へと向かったのだが……。
「うぉ! あっちぃい……!」
炎竜さんの寝所は、黒竜城の中にあった。
だがその部屋に入った途端、凄まじいまでの熱波に襲われた。
「炎竜さん……もしかして、ブレイズ・ドラゴンか?」
部屋の奥に横たわっていたのは、全身が真っ赤に燃えているドラゴン。
ブレイズ・ドラゴン。
炎に強い、というか体が炎でできてる竜だ。
「おお! さすが獣ノ医師だ、博識だな先生」
「まあな……つーか、苦しそうだな」
炎竜さん「グギャァアアアア!」と吠えて暴れ回っている。
その雄叫び(オスじゃあないけど)とともに熱波が周囲に広がっている。
なるほど、並の医者じゃ診察したくても、この熱波の中で死んじゃう。
だから、俺を連れてきたってわけか。
「大丈夫か、先生?」
「ああ、俺に任せておきな」
神の力が宿ってないときは、耐熱装備がないと、診察はできなかった。
でも……今は違う。
「いくぜ」
俺は熱波の中をズンズンと進んでいく。
熱が俺の肌を焼くが、途端、元通りになる。
「ど、どうなってんだ先生!?」
「ただ、治癒能力を回しっぱなしにしてるだけだぜ?」
熱によって細胞がダメージを受けても、それを上回る回復力によって、瞬時に細胞を元通りにしてる。
その結果、ダメージはプラマイゼロになって、受けてないのと同じってことになるのだ。
「す、すげえ……さすが先生」
俺は熱波の中、炎竜さんのもとへと近づく。
そして、ニコッと笑って言う。
「はじめまして、俺は獣ノ医師ジーク・ベタリナリ。ちょいと、診察させてもらうぞ?」