204.親がめっちゃ結婚進めてくる
ある日のこと。
獣人国にて。
俺は神獣王ソフィア(ハクの母ちゃん)に呼ばれて、お城までやってきていた。
「おっす、ソフィア」
玉座に座っているのは、髪の長い、美しい女性だ。
流れるような金髪に、白い犬耳としっぽ。
豊かなバストが特徴的。
「久しぶりですね、ジーク」
彼女は俺の元雇い主だ。
元々は俺、この獣人国で宮廷獣医師長をやっていたんだっけ。
それがなんやかんやあって、俺も王様やってるのだ。
「おー! 先生! ひっさしぶりだなぁ!」
「神竜王じゃん」
「エルロンでいいんだぜ!」
この大男は、神竜王。
昔こいつの奥さんである氷竜を助けてから、知り合いになったのだ。
「今日はどうしたんだ、ソフィア?」
「久しぶりに、お酒でもと思いましてね」
「飲み会かぁ、いいね!」
ということで、神獣2匹とともに、飲み会が開かれた。
ソフィアの寝室へと移動。
車座に座って、俺たちは酒を飲む。
「まぁ、おいしい。ジーク、これはなんてお酒ですか?」
俺が昔趣味で作った酒を、ソフィアが一口飲んで言った。
「ニホーン酒っていうらしい」
「にほーんしゅ……妙な名前ですね」
「俺の親父の祖先が開発した酒だ。穀物から作るんだよ」
ぐびぐび、とエルロンが俺の作った酒を飲む。
「やー! うまい! こんなうまい酒ははじめてだ! 先生は酒を造らせても天才たぁな! すごい!」
「ほんと、こんなおいしいもの、初めて飲みました」
くぴくぴ、とソフィアが飲んで、ふぅ……と息をつく。
「気に入ってもらえて何よりだよ」
ニホーン酒は、結構癖が強くて、好き嫌いがかなり分かれる。
俺や親父は結構好きなんだが、チノやちーちゃんは苦手らしい。
神獣は好きか。何か違いがあんだろうか。
「いやぁ、先生さぁ。あんたほんとすげーよ」
「どうしたよ、いきなり」
エルロンが酔ってるのか、顔を真っ赤にして、俺の首の後ろに、腕を回す。
「人間や獣だけでなく、世界の異変すらも治して見せる。こんな素晴らしい医者はどこを探してもいない!」
思えば今日までいろんなものを、この右手で直してきたな。
「そこで、だ。どうだ? そろそろ身を固める気はないか?」
「結婚ってこと?」
「そう! そこでうちのきゃわいい~娘シアなんてどうだい?」
シアはエルロンの娘で、青い鱗をした子供竜だ。
「あら、エルロン。抜け駆けずるいわよ」
こっちも赤い顔をしたソフィアが、ずいっと近づいてくる。
随分と距離が近く、胸が完全にあたっている。
「それを言うなら、わたしの娘ハクはどうかしら? あの子もそろそろ、つがいを見つける時期なのよ」
「嫌なに言ってるんだよソフィア! うちの娘のほうがいいにきまってら!」
「だめよ、ジークはハクと結ばれるの」
額を突き合わせるふたりとも。
「まー、落ち着けよ。まだ結婚する気はないからさ」
じとっ、とふたりが俺を見てくる。
「誰かいい人でもいるのかしら?」
「例えばあの銀髪の娘っ子? あるいは、地竜ちゃんかい?」
う、鋭い……。
「まあ、まあ、動物ではハーレムは当たり前ですから。うちの娘もそこへ加わってもいいですよね?」
「だな。おれの娘もハーレムにいれてくれや」
結局その日は、
どうだどうだ? とめちゃくちゃに、娘さんたちを進められまくったのだった。
うーん、結婚かぁ……。




