203.洪水と土砂崩れ
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夏の終わりのある日のこと。
大雨の降った日、俺は飛竜にのって、山間部へとやってきた。
俺がいるのは、獣人国ネログーマ。
自然豊かな国。
水も緑も豊富にある。
だが川があちこち流れているせいで、こういう大雨の日とかは、氾濫することがおおい。
「おーい、大丈夫か!」
「あ! 魔王様!」
魔族の一人が俺に気付いて声を張り上げる。
そう……俺は一応魔王をやっている。
病床にいた前魔王を治したことで、その役を引き継いだのだ。
今では魔族だけでなく、魔獣も、獣人も、みんなが楽しく暮らせる国作りをしている。
「悪い、遅れたな」
「いえ! 魔王様、ありがとうございます! あちらです!」
魔族につれられ、やってきたのは……幅広い川だ。
穏やかな流れも今は、濁流に飲まれている。
「この大雨のせいで川が氾濫し、橋も崩れてしまいました……!」
対岸へ架かる橋が真ん中で壊れている。
「それに……」
「きゃー! たすけてー!」
子供が川の真ん中でひとり、取り残されている。
魔法で作った土の柱の上で震えていた。
「助けようにもこの急流では……」
「魔王様、大変です!」
そこへ鳥の魔族が、空を飛んでやってきた。
「今度はどうした?」
「土砂崩れが起きて、多くの民が下敷きになっております!」
土砂崩れに川の氾濫。
悪いことは重なるものだ。
「魔王様、いかがいたしましょう……!」
「大丈夫だ。まかせな」
俺は飛竜の背にのって、空へと登る。
『兄貴! たのんます! 見せてください……神の奇跡ってやつを!』
ワイバーンが声を弾ませる。
彼らは俺と付き合いが長いからな、おれがどんな力を持っているのか、これからどうなるか、わかるのだろう。
「別に神って訳じゃないが……神の力、有効活用させてもらうぜ」
俺は右手を高く掲げる。
そして……能力を発動させた。
その瞬間……。
まばゆい光が右手から発生する。
それはともすれば、太陽の光と間違える人が居てもおかしくない。
まばゆい光は、分厚い雨雲を消していく。
光に触れた部分は、あるべき姿へと戻っていく。
雲に覆われた空は、何もない大空へ。
溢れかえった川は、穏やかな流れに。
そして崩れた山の緑と、押しつぶされた人たち。
光に触れたものは、すべて……回帰する。
『さっすが兄貴の神の手! 世界最高の治癒術の威力は、はんぱねーっす!』
「毎回思うけど、これ治癒術のレベル超えてるよなぁ」
まあそれのおかげで、たくさんの人の命が助かるんだ。
この力の正体とかどうでもいい。
「「「うぉおおお! さすが魔王様ぁああああああああ!」」」
川で溺れかけた子供は助かり、折れた橋も元通り。
この手があれば全て元通りなのだ。
「ノーリスクでこれ使えるのほんとやばいよな……」
そもそもこの力って何なのだろうか……?
……ま、それはいいか、どうでも。
俺はみんなの笑顔が見れれば、それでいいんだ。
【※読者の皆様へ】
この度、宮廷獣医、ネット小説大賞様にて、期間中受賞させていただきました!
改題・改稿を加えて、モンスターノベル様から、好評発売中です!
めちゃくちゃがんばって書きました!
特に獣人スローライフものは、僕のデビュー作と同じ題材です!
作家デビューから約三年で、どこまで成長したのか、ぜひお手に取ってみてくださるとうれしいです!
【作品URL】
https://gaugau.futabanet.jp/list/work/60ebb4277765619176000000/novels/1?utm_source=twitter.com&utm_medium=referral&utm_campaign=bot