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202/241

202.女の子達とのスローライフ

【★お知らせ】

このたび宮廷獣医が書籍化されます!

8/30発売です!

挿絵(By みてみん)




 ある日のこと。

 俺、ジーク・ベタリナリは、獣人国にある湖まできていた。


「ふぁー……ねむい……」


 釣り竿を手に持って、俺は湖面に糸を垂らしている。


『ジークー。ぽかぽかきもちーねー』

「おう、そうだなぁ」


 俺の頭の上には、白い子犬が寝そべっている。


 この子は神獣王の娘。ハク。


 俺がこの国に来ることになった、きっかけとなった子だ。


 森で倒れてたこの子を俺が助けたところから、すべてが始まったんだよな。


『じーくー。まぶちー』


 膝の上に乗っていたのは、蒼銀の鱗を持つ子竜、シア。


 こっちは友達の神竜王の娘さんだ。


「おう、ごめんよ」


 俺はスキルを使ってパラソルを作る。


 俺の右手は、神魔の右手。


 最初は回復魔法だったこれも、今やほぼなんでもありな超絶チート能力まで進化している。


 あらゆるものを直し、あらゆるものを壊す……創造と破壊の力を持つ。


 それを応用してパラソルを作り出したのだ。


『きゅ、ちょうどいいのぉー……』


 シアが気持ちよさそうに寝息を立てる。

 俺は彼女の頭をなでながら魚を釣り上げる。


「逃げられちった」

『ねーねー、じーくぅ。とってこよっか? 中に入って?』


 ぴょん、とハクが飛び降りてそんなことを主張する。


「いいって。のんびりやるさ。時間あるし」

『そうなのー? ここ最近ちょー忙しそうだったけど』


「ああ。一段落したからな、もろもろ」


 こっちの国に来てから、魔王になったり、建国したり、元魔王の手下とかが襲いかかったり……。


 スローライフするつもりが、忙しい日々を送っていた。

 

 けれど先日地下での一件をおさめてから、驚くほど平和が続いている。


「嫁問題も一段落したからな」

『よめー?』


 と、そのときだった。


「ジークぅ!」


 振り返ると、赤髪の美女と、青髪の美少女が笑顔で近づいてくる。


 ちーちゃん。最初はただの地竜だったけど、存在進化して今は人間になれる。


 チノ。俺の妹だ。


「ここにいたのね、チノといっしょに捜してたわよ」


「ごめんって。ん? チノ、なんだそれ?」


 妹の手には、バスケットが握られていた。


「お昼ご飯ですよ。ちーちゃんといっしょに作りました。ねー?」


「うん!」


 ふたりが仲良くうふふと笑っている。


 ああ、仲良きことは良いことだ。


 前は、ケンカばっかりしていたふたりも、この間の地下での一件から、仲良くするようになったのだ。


 俺たちはレジャーシートを広げて昼ご飯を食べる。


「はい兄さん、あーん♡」


 チノがアヒージョをスプーンで掬って俺に向けてくる。


「いや、1人で食えるよ」

「ジーク、そこはちゃんとあーんしてあげて」


 ちーちゃんが真剣な顔で言う。


「え、そぉ?」

「そう、それが礼儀」


「わかったよ。あーん」


 俺はチノから食べさせてもらう。

 うめえ。


「ありがとうちーちゃん」

「ううん、いいのよチノ」


 ふふっ、と微笑む。


「ちーちゃんも、あーん♡」

「あーん♡」


 チノがちーちゃんにもアヒージョを食べさせる。


『ふたりとも、いつの間に仲良しさん?』


 ハクがもふもふと食パンをかじりながら、俺に尋ねてくる。


「前から仲良しさんだったよ」

『ふーん、そっか! なかよきことは、よいことなりー』


『……なりー』


 そんなふうにまったりとした午後を過ごす。


 さぁ……と森の中に爽やかな風が吹く。


 草原の草花を、森の木々を揺らす。


「あー……のんびりしてますなー」


 すると、チノとちーちゃんが、ぴったりと俺に寄り添ってくる。


「ところで兄さん……午後の予定ですが……」

「特に……ないわよね……」


 うるんだ目で、ふたりが俺を見上げてくる。


「楽しいこと……しない?」

「楽しいことって?」


「そ、それは……は、恥ずかしいわよ、そんなこと言わせないで……」


 ちーちゃんが顔を赤くしていやんいやんと体をよじる。


 うーむ、なんだろうか……?


「兄さん。気持ちの良いことです」

「気持ちの良いことって?」


「そ、それは……言わせないでください、は、恥ずかしいです……」


 うーむ、ふたりが何を言いたいのかさっぱりわからん。


『らぶが、こめってますなー、シアちゃん』

『……じーく、もてもて』


 よくわからんが、まあそんなふうにみんなと仲良く過ごす。


「こういう時間が、ずっとずっと続けば良いのにな」


 

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★1巻11/15発売★



https://26847.mitemin.net/i778881/
― 新着の感想 ―
[一言] ゆうべはおたのしみでしたね
[気になる点] 俺の頭の上には、白い子犬が寝そべっている。 ⇒「頭にしがみついてる」とか「頭に乗っかってる」ならともかく、頭の上に『寝そべってる』のは相当頭がでかいか頭頂部の面積が広いか平らじゃないと…
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