02.神獣を助ける
国営の牧場は王都郊外から、結構離れている。
地竜の【ちーちゃん】の背中に乗って、王都を目指していた。
「ぐわっ! ぐわっ!」
「どうしたちーちゃん、荒ぶってんな」
地竜とは人間より一回りくらい大きな、走ることに特化したドラゴンだ。
この娘は幼竜のとき、怪我していたところを俺が保護し、以後育てている。
「ぐわー!」
「俺のために怒ってくれてんのか? ありがとなー」
よしよし、とちーちゃんの長い首を撫でる。
宰相に突き飛ばされている現場を、この子は目撃していたのだろう。
「ま、よくあることだ」
「きゅーん……。くわ? ぐわぐわ!」
ちょうど森にさしかかったそのときだった。
ちーちゃんが足を止めたのだ。
「どうしたちーちゃん?」
「ぐわー!」
ダッ……! と地竜が突如として走り出したのだ。
「お、おい! 王都はこっちじゃないぞ! どこいくんだよ!」
だがちーちゃんは勝手に森の奥へと進んでいく。
ややあって、俺は【それ】を目撃した。
「怪我してる……犬?」
真っ白な毛の犬が、森のなかに倒れていたのだ。
「なるほど、弱っているこの子を助けて欲しいんだな」
「ぐわー!」
俺はちーちゃんから降りて、さっそく犬のそばへと向かう。
かなり小さい子犬だ。
俺が近づいても微動だにしない。よほどヤバい状況だろう(野生動物は絶対に人間を近くに寄せ付けないからな)。
マジック注射器を取り出し素早く採血。
「【医療鑑定】」
シリンジに鑑定魔法を使う。
これは通常の物体の価値を見抜く鑑定を応用し、採取した血液の成分から、患畜の状態を調べる魔法だ。
「毒素が検出された。なにか毒草でも食ったな」
「きゅ、きゅー……」
子犬が怯えた目を俺に向けてきた。
知らない人間がそばにいたら、怯えるのは当然か。
「安心しな、悪いようにはしない。俺は獣ノ医師だ」
「きゅー……」
ちーちゃんの背に積んでいたリュックから治療道具を取り出す。
採取した血液をより詳しく鑑定した結果、食べた毒草が【しびれ草】だと判明。
「良かった、大がかりな手術は必要なさそうだ」
解毒に必要な薬草をリュックから取り出す。
「【調剤】」
必要とされる薬草を混ぜ、薬を作り出す獣ノ医師に伝わる固有スキルだ。
薬草が空中で成分抽出され、調合され、そしてマジック注射器のなかに薬液が満たされる。
「これを打てばすぐに治るからな。ジッとしてろよ」
「きゅー……」
不安げに子犬が俺を見上げてきたので、その頭を撫でてやった。
すると子犬は安心したように目を閉じる。
俺は素早く薬液を投与すると、ほどなくして子犬の震えが止まった。
「きゅー!」
むくり、と子犬は立ち上がって、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。
「ははっ、元気になって良かったなぁおまえ」
子犬は俺を見上げて、ペコッ……とお辞儀をした。
え、お辞儀?
『ありがとー! このおれー、ちゃんとするー!』
「は? え? なに……動物がしゃべった!?」
突如として突風が吹く。
「うわっぷ!」
砂塵が巻き上がり、次の瞬間には……さっきの子犬が消えていた。
「なんだったんだ……あの犬? 夢?」
「ぐわー!」
ちーちゃんが俺の頬をペロペロとなめる。
そのくすぐったさは、今夢の中じゃないことを教えてくれた。
「魔獣だったのか? けどあいつらは魔王に意思を乗っ取られててコミュニケーション取れないし……」
いわゆるモンスターかと思ったんだが、どうやら違うようだ。
あいつらは人間を見かけると見境なく襲ってくるしな。
「ま、不思議なことも……あるもんだな」
と、このときはそれ以上深く考えないでいた。
まさかその後、ちゃんと恩返しに来るなんて、思ってもいなかったけどな。
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