199.圧倒的な力の差
俺が大穴で出会った泥の王。
やつのなかに取り込まれていたドワーフ全員を、俺は救出した。
『ばかな……手を抜いていたというのか……！』
「ああ。中にいるエナの親父たちを消すわけにはいかないからな」
さすがに骨すら残っていなかったら蘇生は難しいからな。
『くそ！ なめよって！』
泥の王が地面に両手をつく。
だが何も起こらない。
『ば、バカな！？ 瘴気が操れん……どうなってるのだ！？』
俺は普通に接近して、泥の王の腹に一撃を加える。
『ぐぇあああああああああああ！』
ボールのように吹っ飛んだ泥の王。
先回りして、俺はやつの体に一撃をたたき込む。
一撃で泥の王は地面にたたきつけられる。
『ど、うなっている……瘴気が……ない……』
「ああ。この辺り一体の瘴気は、俺の右手で全て中和した」
この泥の王は、瘴気を自在に操って攻撃してきた。
この大穴に存在する瘴気を全て、神魔の右手で浄化してやれば、攻撃手段を失うってわけだ。
『あ、ありえん……なんだ。なにものなのだ……貴様？』
「俺はジーク」
『ジーク。そうか……貴様か……ヤツの言っていた……魔王か……！』
なんでこんな奈落に住んでいるような化け物が、俺のことを知っているんだ？
「まあいい。右手で読み取ればわかる」
『く、そがぁあああああああ！』
泥の王が自らの体を変形し、ガスを展開する。
周囲に瘴気がなくとも、ヤツの体はガス状を固めた物だからな。
だが、俺にとってそんな物は関係ない。
伸ばされてきたガスを、俺は手で掴む。
「【ヒール】」
『うぎゃぁあああああああああああ！』
気体だろうが、触れることができるのならば、浄化可能だ。
『バカなぁあああああああ！ 深淵を支配する、この我がぁああああああああ！』
神魔の右手の浄化魔法によって、高濃度で固められていた瘴気すらも浄化する。
あとには、何も残らなかった。
「す、すごい……あんな化け物を、倒してみせるなんて……」
後ろで見ていた、エナの親父と、泥の王に食われていたドワーフたちが目を剥いている。
「これでもう安心だな」
「ありがとう、ジーク様！」「我らを救ってくださりありがとう！」
