198.VS泥の王
俺は地下で出会った、知性のある黒獣【泥の王】と相対する。
『まずは小手調べと行こうか』
ぶわ……! と泥の王から瘴気が吹き荒れる。
それは触れれば即死のガス。
超スピードで俺に襲ってくる。
俺は神魔の右手でバリアを張ろうとして……直感でヤバいと感じて避ける。
右に飛ぶと、瘴気のガスが追尾してきた。
やはりそうだ。
右手でバリアを張っていたら、バリアを迂回するようにして襲ってきただろう。
『良い勘しているじゃないか。サルのくせに』
飛んだ先で泥の王が待ち構えていた。
こいつは……偽物だな。
背後からはガス、正面には偽の泥の王。
俺はその場で飛び上がり、挟撃を躱す。
すると飛んでいった先にガスが集中し、泥の王の姿になる。
『ふんぬっ!』
高速の一撃を俺にたたき込んできた。
そのまま俺は、瘴気の沼へとすっ飛んでいく。
はげしい水音。
周囲には瘴気が漂う。
『他愛ない。やはり、この程度か』
「そりゃこっちのセリフだ」
俺は瘴気の沼の上で立っている。
「ご大層に登場したから、どんだけ強いのかと思ったけど、なんだこの程度か?」
『ほざけ。貴様こそ、我の攻撃の前に手も足も出なかっただろうが』
「ああ、そりゃ……こういうことだよ」
俺の隣には、年老いたドワーフが立っている。
「し、信じられん……わしは……助かったのか?」
「ああ。大丈夫、生きてるよ」
恐らくはエナの親父だろう彼が、俺の隣にいる。
『ば、バカな!? いつの間に!』
「あんたが俺をたたきつけたときに、摘出させてもらったよ。こうも見えても医者なもんでな」
神魔の右手で泥の王の腹に触れて、そのまま親父を摘出したのだ。
「それと、てめえが食らっていた他のドワーフたちも、ついでに返してもらったぜ」
陸地で気を失っているドワーフたち。
『ば、バカな! あいつらは我が食らったはず!?』
「骨が、残ってたからな。そこから蘇生させてもらったよ」
『そ、蘇生だと……そんなことが、可能なのか……』
さて、と俺は泥の王を見やる。
『ぐ、う、くそおぉおおおお!』
瘴気のガスが俺に襲い来る。
だが、俺は右手を振るうだけで、ガスは綺麗さっぱりと消し飛んだ。
「これで心置きなく、てめえを消し炭にしてやれるよ」