18.兄の方が魔法の天才だと世間にバレる
「ちょっと待ったぁ!」
獣人国との国境にて。
妹チノのもとに、知らないおっさんたちが、森の奥からやってきた。
「……またあなたたちですか。しつこいですよ」
俺への態度から一転、冷淡な態度でチノが接する。
「だれ?」
「魔法大学の教授やら研究機関のトップやらです。私をスカウトしようとつきまとってきて迷惑してます」
なるほど、魔法機関のお偉いさんたちってわけか。
「チノ様! ぜひ魔法大学の教授に!」
「専用の研究室をもう建てて用意しております!」
おっさん数名がこぞって、チノに熱烈アピールしている。
妹は100年にひとりの天才って言われてるからな。
どこも彼女が欲しいのだろう。
「……私はどこにも所属しません」
「「「そんなぁっ!」」」
「第一、私よりもまずスカウトするべき天才が、ここにいるではありませんか」
そう言って、チノが俺を見やる。
「? そちらの御方は……?」
「俺はジーク。こいつの兄貴で、獣ノ医師だ」
おっさんたちは俺を見て、小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
「チノ様、お戯れはよしてください。天才魔法使いであるあなた様を差し置いて、こんな畜生の世話係などスカウトしません」
「しかもジークで獣ノ医師といえば、宮廷を追放された無能の屑だともっぱらのウワサではありませぬか!」
ビキッ……! とチノの眉間に血管が浮かぶ。
あ、まずい。
「ええっと、今日はもう帰ってくれ。な? な?」
妹は怒ると手がつけられなくなる。
だから解散させようとしたのだが、おっさんたちは譲ろうとしない。
「……兄さん。見せてあげてください、この愚か者どもに、あなたの魔法を」
別に見せるほどでもないのだが……。
そう言えばチノのせいで、森が氷づけになっていた。
「ほいよ」
俺は手を頭上に伸ばし、魔法陣を展開。
ごぅっ……! と凄まじい熱波が周囲に発生する。
「こ、凍っていた木々が……も、森ごと消滅しただと!?」
「ほいと」
今度は地面に魔法陣を展開すると、ボゴッ……! と大量の木々が生えて、あっという間に森は元通りになった。
「「「…………」」」
「さすが兄さん、すごい威力の魔法です。森の生き物たちは?」
「全員に結界を張っておいたぞ。当たり前じゃないか」
すると魔法大学のトップの人が、俺にくってかかってくる。
「き、きみぃ!? い、今……結界魔法を使ったのか!? 無詠唱で!? この森全体にいた生き物すべてを!?」
「お、おう。それがどうかしたか……?」
信じられない……みたいな顔のおっさん。
「広範囲の殲滅、再生、結界魔法は、この世界で数えるほどしか使えませんし、だいいちそれを無詠唱で同時展開なんて、さすが兄さん、人間技ではありませんね」
「ふーん。あっそ。ま、森も戻ったし帰るか」
「「「ちょっと待ったぁああ!」」」
魔法機関のお偉いさん方が、俺に詰め寄ってくる。
「ど、どうしてそんな凄い魔法の才能を生かそうとしないのだ!?」
「え、だって攻撃魔法とか、動物の治療に一切使えないし」
治癒魔法の才能が欲しかったなぁ。
ただ女性の方が治癒に適性があるという研究データがあるそうだ。
「兄さんは昔から私より魔法の才能がありました。ただ彼には家を継いで獣ノ医師になる役割がありました。それがなければ今頃世紀の大賢者として名を残していたことでしょう」
「それ、昔から言うけど、大げさなんだってば」
「いいえ。私の魔法技術はすべて兄さんの模倣。私が100年にひとりなら、兄さんは1000年にひとりの大天才です、と何度言っても聞いてくださらないのですから」
お偉いさんたちがいっせいに、俺に向かって言う。
「ぜ、ぜひとも魔法大学に教授として来てくれませぬか!」
「やだ」
「で、では研究室に」
「断る」
「「「どうして!?」」」
「え、だって俺もう、獣人国で働いているし」
「「「そ、そんなぁ~……」」」
なんかショック受けているおっさんたちをよそに、俺は妹を連れて国へ帰る。
「じ、人類はとんでもない魔法の天才を失ってしまったのではないか?」
「というか! 国はこんな魔法の逸材を畜生係に据えていたのか!」
「そばにいて才能を見抜けぬとは! 国王に抗議せねば!」
なんだかよくわからんが、おっさんたちはおとなしく帰っていった。
「兄さんの才能に今更気づいても、もう遅いのですよ」
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