178.雪の国
クラーケン達と別れ、俺たちは港へと到着した。
その後、馬車に乗って、目的地へと向かう。
「うぶぶ……さむい……寒すぎて死にそうだわ……」
俺たちは幌馬車に乗っている。
ちーちゃんは体に毛布を巻いて、ぶるぶると震えていた。
「兄さん、見て。雪ですよ」
「おお、ほんとだなぁ」
しんしんと雪が降り注ぎ、街道には雪が積もっている。
滑らないように馬車は慎重に走っていた。
「な、なんでこんなゆ、雪ふってるの……?」
「ドワーフの国カイ・パゴスは氷精霊が多く住み着いている影響で、一年中氷雪に包まれているのですよ」
曇天から降り注ぐ雪が止まることはない。
吐く息は白くなって消えていく。
「ちーちゃん、大丈夫か?」
「ちょ、ちょっとむりかも……」
地竜は寒いところ苦手だからな。
「ふっ。帰っても良いんですよ? 兄さんと二人きりで行ってきますので」
口の端をつり上げて、チノがなんだか胸を張って言う。
「ば、ばかいうんじゃないわよ。そ、そんなことさせ……へくちっ」
「ああほら、ちーちゃん。おいで」
俺は自分にまいていた毛布をはだけて言う。
「兄さん!? な、なにを!?」
「なにって……寒いだろうから暖め合おうって。ほらおいで」
チノがショックを受けたような表情で、ふらつく。
「そ、その手があったか……!」
ちーちゃんは立ち上がって、のろのろと俺の隣へとやってくる。
彼女をくるんでやると、眼を細める。
「とてもあったかいわ……」
「そりゃよかった。しばらくこうしてな」
「うん♡ えへへ~……ジークぅ~……♡」
ギリギリ、とチノがその様子を見て、歯ぎしりしている。
「先ほど御者の話では、ここらで魔獣が見かけるから注意するようにとのことでした。食われないようにしないとですねは虫類はとくに」
「まあまあ落ち着けよ」
しかし魔獣の活性化か。
海にクラーケンたちといい、いよいよもって何か異常事態が起きているようだ。
血液から詳しい成分を調べるには、ある程度時間が掛かる。
今、魔王国の実験室で、暴走していたクラーケン達の血中成分を調べさせているところだ。
「この先に、なにが待ってるんだろうな……」
と、そのときだった。
「きゃー! た、たすけてー!」
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