176.とりあえずヒールって言っとけば良いみたいな風潮
俺たちの船を襲ってきたのは、クラーケンの大群。
しかし何もしてないのに、向こうは体力切れで倒れてしまった。
「とりあえず、【治癒】」
俺は神魔の右手で倒れているクラーケンたちの体力を戻す。
「なっ!? あ、あんたなんでクラーケンに治癒魔法を施してるんだよ!?」
事情を知らない救助者たちが、目を剥いて叫ぶ。
「まあ俺獣ノ医師だし。傷付いている魔獣はほっとけないしな」
「だからって……また襲ってきたらどうするんだ!? ああほら見ろ!」
起き上がったクラーケンの大群達。
その目は赤く、敵意に染まっていた。
「そんじゃ、【解呪】」
理屈はわからんが、とりあえず呪いを解くスキルを使ってみた。
すると彼らの目の色が戻る。
「く、クラーケンが攻撃をやめた……だと……!?」
驚愕する救助者達。
一方でクラーケン達は俺に近づいて、何度も頭を下げてきた。
「知性が低いからしゃべれないのか。そんじゃ【進化】」
神魔の魔力は進化をもたらす。
俺は彼らに力を与えると、クラーケン達が頭をペコペコと下げる。
『すみません、急に襲いかかってしまって』
「「「しゃ、しゃべったぁあああああああ!?」」」
腰を抜かす救助者達。
「とりあえず事情聴取はあとな。彼らの船を戻さないと。【修復】」
クラーケン達の手によって破壊された船は、一瞬で元の姿へと戻った。
「「「…………」」」
「クラーケン達も悪気があったわけじゃないみたいだし、許してやってくれ……って、どうしたみんな?」
愕然としてる彼らに代わって、チノが感心したように言う。
「さすが兄さんです。どんな問題も一瞬で解決。お見事です」
「アタシたちは見慣れた光景だけど、この人達はそーじゃないんじゃない?」
ちーちゃんに指摘されて、しまった……と俺は遅まきながら気づく。
魔王国では日常茶飯事でも、外の人たちは俺の力を知らない。
ついうっかり、国内にいるときと同じノリでやってしまった。
「あ、あんた……い、いったい……何をしたんだ? あの力は一体……?」
「ええっと……全部【癒やし】の力です」
「「「嘘をつけぇえええええええ!」」」
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