173.どっちが同じ部屋?
ドワーフの国までは船で数日かかるとのことだった。
俺は船室を2部屋予約した。
「なるほど。では兄さんと私が同じ部屋、爬虫類はひとりでってことですね」
「はぁ~~~~!? ふざけるんじゃあないわよ!」
船室の立ち並ぶ廊下にて。
ちーちゃんが声を荒らげる。
「兄さんは私と同じ部屋に泊まりたいからそうしたんですよね?」
「いや、普通に男女で別れるつもりで予約したんだが?」
「照れ隠ししてる兄さんも可愛いですっ」
どうしよう、妹が話を聞いてくれない。
「バカ言ってんじゃないわよ」
ちーちゃんが俺の腕をつかむ。
「恋人同士で同じ部屋、お子ちゃまは別の部屋ってつもりで予約したのよね?」
「いや違うけど……」
「照れ隠しなんてしなくてもいいわ。わかってるもの」
どうしよう、相棒の地竜が言うことを聞いてくれない……。
「ふざけてるのはあなたです。我々の邪魔をしないでください。トカゲは空気も読めないんですか?」
「あんたこそアタシたちの邪魔しないでよね。やだやだ、子供ってばほんと身勝手なんだから」
なんでこの子ら、こんな仲悪いんだろう……?
付き合いは結構長いはずなのに、一向に仲良くなる気配がない。
「兄さんは誰と同じ部屋になりたいのですのか?」
「アタシよね? 当たり前じゃないね?」
チノは笑顔のはずなのだが、なぜだろう、周囲から魔力が漏れて、窓ガラスが凍っていく。
ちーちゃんも笑顔なのだが、拳をギュッと握りしめて、船がぐらぐらと揺れだした。
「あのな二人とも、人目があるんだから、こんなところでケンカしちゃいけないだろ?」
「「誰のせいでケンカしてると思ってるのだよ?」」
結局揉めに揉めた末に、男女で分かれて寝ることになったのだった。