171.同行者は誰に?
俺は地盤沈下事件を調べるため、ドワーフの国【カイ・パゴス】に行くことになった。
ここから海を越えた南東の国。
そう、海外だ。
船はラルクが手配してくれることになった。
ただ、長旅が予想された。
俺の部屋にて。
「アタシがジークと一緒に行くんだもん!」
地竜のちーちゃんが、人化した姿でそう主張する。
「いいえ、兄さんと一緒に旅に行くのは、この私です」
一方で、妹のチノも一歩も譲らない。
「お? なんだ先生、もめごとかい?」
「神竜王……」
俺の国に住んでいる神獣の一名、神竜王が興味深そうに、こちらへとやってくる。
「や、別にもめ事というか……」
「ふぅむ、どうにも先生を巡っての女の戦いに見えるねおれは」
チノとちーちゃんが、互いに額を付き合わせて、ずっと同じ討論をしている。
「ドワーフの国は雪と氷に包まれてるって言うじゃない。足が必要でしょ? ほら、アタシが必要じゃない」
「は? あなたバカですか? 地岩竜の巨体で外を出歩いたら、歩くだけで雪崩が起きます。大切な兄さんを殺す気ですか?」
神竜王が「ははーん」と訳知り顔でうなずく。
「先生と誰が一緒に、ドワーフ国行くかでもめてるんだなぁ」
「まあ、そんなとこ」
正直俺一人で行くつもりだったのだが、俺一人で長旅をさせるわけにはいかない、と互いに譲らないのだ。
「愛されてるねぇ、先生」
「そりゃどうも。けどそろそろ決着つけて欲しいんだが……」
「んじゃ先生が仲裁に入らないと」
「そりゃまたどうして」
「先生を巡る争いなんだから。ほら、いったいった」
神竜王に背中を押されて、俺はちーちゃんたちの間に入る。
「まあふたりとも、ケンカはよくないぞ」
「「別にケンカしてませんけど?」」
めっちゃ怖い顔。
「お、落ち着けってふたりとも」
「「は? 落ち着いてますけど?」」
何を揉めているんだろうかこの子ら……。
「別に、誰が一緒についてこようがどうでもいいじゃないか」
「「ちょっと黙ってて」」
「あ、はい」
そんな様子を、神竜王がゲラゲラと爆笑しながら見つめているのだった。
ほんと、何なのだろうか……?