167.久しぶりの商人ラルク
ある日のこと、国境の町に、商人のラルクがやってきた。
「ジークさん! おひさしぶりですっ!」
「ラルクか。ほんと、ひさしぶり」
城壁の外に馬車が転移してくる。
「すまんな、最近ちょっとバタバタしてて、挨拶できなくってさ」
「いえ! お忙しいのは存じておりました。まさか魔人兵団を倒すなんて……すごいです!」
ラルクは顔が広く、俺が魔人を倒したことも知っているみたいだ。
別に公にはしてないんだが、さすが情報通といったところか。
「というかラルクよ」
「はい?」
「なんかちょっと、身なりがきれいになったな」
ラルクが率いていた馬車は、ちょっと見ない間に豪華になっていた。
以前はひとりで来ていたのだが、今は商人の部隊を連れている。
地竜が立派な荷台を引いていた。
「ジークさんのおかげで、最近すっごく儲かっていまして」
俺の国で生産している、人工の魔力結晶を始めとした工業製品。
それをラルクは仕入れて売っている。
「大きな屋敷に、お嫁さんと一緒に暮らしています!」
「おま、結婚したのか……」
「はい! これも全部ジークさんのおかげです! 本当に感謝してます!」
俺より年下の子がすでに結婚を決めたなんて……。
「もしかして、みんなこれくらいになると結婚するのが当たり前なのか……?」
「ご結婚の予定でもあるのですか?」
「あ、いや。別にないが」
「そうなのですか? てっきりチノ様やちーちゃん様ととっくに結ばれているものかと」
「いやいや、ちーちゃんは地竜だし、チノに至っては妹だぞ」
「? 何か変ですか? ぼくのお嫁さん獣人ですよ。種族の違う間での結婚って普通だと思いますけど」
ちーちゃんはともかく、肉親と結婚するって言うのはちょっと……。
「あれ? チノ様ってたしか血の繋がって……」
そのときだった。
「すとーぷ!」
チノが転移してきて、ラルクの口をふさぐ。
「ごきげんようラルク様あははさぁさお茶でもほら兄さんもぼーっと突っ立ってないで中に案内して下さいよ」
「あ、うん」
チノがものすごい早口で、そう言うのだった。
なんなの?