159.ルゥザー、真の王に敗北する
魔王ジークによって、毒竜となったルゥザーは消し飛ばされた。
『う、ぐ、うぉおおおおおおおおおお!』
肉体を完全に失った魔王子だが、しかし、魔王への強い恨みの念はこの世にとどまった。
彼の強い意志は呪いとなって、ジークにまとわりつく。
『ジーク! 貴様を呪い殺してやるぅうううう!』
強い怨念の力で、魔王の意識を乗っ取ろうとする。
だがジークは、肉体を失っているはずの、魔王子の魂を手でつかむ。
『な!? そんなバカな! 魂を物理的につかむだとぉお!』
「俺の右手は、規格外なんでな」
神魔の右手は万物に作用する。
あらゆるものに干渉する力を有しており、つまり魂すらも知覚し、触れることが可能となるのだ。
『なんて……化け物じみた手なのだ……そんなの、神の力じゃないか……』
圧倒的力の差を前にして、がくがくとルゥザーは震える。
真正面からぶつかっても、肉体を犠牲にした奥義を使っても、そして……強い恨みの威念を用いた呪いすらも、この魔王には通用しない。
ルゥザーは理解する。
眼前の存在は、この世の理から外れし超越者であることを。
「さて……幕を下ろすか」
『う、ぎ、あぁああああああああああああ!』
魔王子は、気づけば情けない声を上げていた。
『いやだ! いやだぁあああああああああ!』
死毒をきれいさっぱり消し飛ばすほどの力を持つのだ。
魂だけの、か弱い今のルゥザーなど、存在丸ごと消してしまうだろう。
『たすけてぇええ! おねがいだぁ! たすけてくれよぉおおお!』
情けなく命乞いするルゥザーに、ジークは冷たいまなざしで見下ろす。
「そう言って助けを求めたやつを、おまえは今までどれだけ、殺してきた?」
『う、うわぁああああああああああ! いやだぁ! 死にたくないぃいいいいいいいいいい!』
ぐっ、とジークは右手に力を込める。
「じゃあな、ルゥザー」
『ひぎゃぁあああああああああ!』
神魔の右手が発動し、聖なる光が悪なる魂を浄化する。
肉体、そして魂すらも失い、ルゥザーはこれにて、完全に敗北したのだった。