156.魔王VS魔王子
俺は魔王子ルゥザーを倒すために、無人島までやってきた。
新生魔王軍のトップ、つまり魔人たちの親玉だ。
宮廷獣医だった頃ならば、目の前の男が放つ魔力にビビって、腰を抜かしていただろう。
だが、今の俺は違う。
それは強くなったからでは、ない。
俺は今、たくさんの国民達の命を背負っている。
彼らを守りたい、純粋なその気持ちが、俺から俺に勇気をくれる。
「行くぞ魔王!」
「こいよ、魔王」
ルゥザーは魔力を高めると、瞬く間に消える。
ガンガンガン! と四方八方から破壊音。
恐らくは超高速で俺の周りを飛び回って、攪乱しようとしてるのだ。
「死ねぇえええええええ!」
パシッ……!
「なんだとっ……!?」
背後からの蹴りを、しかし、俺は片手で受け止めていた。
「王様のくせに、随分と卑怯な手を使うじゃないか」
「ばかなっ! 貴様目が後ろにでもついているのか!?」
「気配を、魔力を読めば、どれだけ隙を突いて攻撃してこようとわかるよ」
魔力は持ち主の感情によって、波を作る。
攻撃しよう、と魔力を高めると、それは波となって空中を漂う。
あとはそれを肌で感じれば、どこから、どの程度の威力の攻撃が来るのか、読むことができる。
「貴様……! 化け物か……!」
「その通りだよ」
俺は逆の手で拳を作り、振りかざす。
「く! びくともしない……! なんだこれは、まるで大樹のような……ぶべぇええええええええ!」
俺の拳がルゥザーの腹に直撃し、ボールのように吹っ飛ぶ。
「ぐえっ!」
どさり、と顔面から倒れたルゥザーに、俺は近づきながら言う。
「立てよ。この程度なわけじゃ、ないだろ?」
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