155.魔王子、魔王の歩みを止められない
魔王ジークが、魔王子のもとへ攻めてきた。
『最短でてめえのところに行ってやる』
「やってみろよ……偽魔王め……!」
遠見の魔道具をつかい、ジークの姿を見ている。
彼は顔色一つ変えず、城のなかを進んでいく。
大廊下を歩いて行くと、まず出迎えるのは、門番だ。
八腕の巨人が武器を構え、2体立っている。
「そいつは魔人を超強化して作った」『邪魔だ』
バシッ、と軽く叩くだけで、巨人は消し飛ぶ。
「な、なかなかやるな……しかしその門は決してあかな」『消えろ』
バシッ、と扉を手で触れるだけで、扉が瓦解して塵になる。
「……なんだ、なんなんだ、こいつは……」
ルゥザーは玉座に力なく座り込みながら、魔王の行進を見る。
行く手を阻む罠も、門番も、部下も……ことごとくを消し飛ばす。
その歩みを止めることをせず、真っ直ぐに進む。
邪魔する者いっさいを受け付けず、堂々と胸を張り、こちらに向かって歩んでいく。
……その姿は、在りし日の、魔王の背中を彷彿とさせた。
「違う……違う違う違う! あんなやつは、あんなやつ【ら】は魔王ではなぁい!!」
脳裏をよぎったのは父の姿だ。
今のジークとそれが重なる。
「認めん……認められるか! 真の魔王はおれだ! あんなのも、父親も、魔王とは言えない軟弱者だ!」
だが、炎も、風も、氷も、雷も……ヤツを止められない。
誰も彼を止められない……絶対的強者の姿。
それは自分の憧れた、魔王と重なる。
「どこまでも……不愉快にさせるな、偽の魔王めぇえええええええええ!」
ドガンッ! と激しい音とともに、壁が破壊される。
現れたのは、魔王の堂々たる姿。
「来てやったぞ、宣言通り、真っ直ぐにな」
「上等だぁ……! ミンチにしてやるぞジークぅううううううううう!」
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