153.魔王子、いらつく
新生魔王軍の拠点である、無人島。
ジーク対策で、最高硬度の防御結界が施してあった。
しかし結界は破られたと報告が入った。
魔王の間にて、魔王子ルゥザーは耳を疑う。
「ふざ……ふざけるな! 結界が突破されるわけがない! 外の様子を映し出せ!」
「は、はい……!」
部下の魔族が、通信用の魔水晶をもってきて起動させる。
「なっ!? じ、ジーク……!」
魔王ジークが、海の上に静かにたたずんでいる。
結界は力尽くで破壊されている……のではない。
「!? 結界がそもそも消え失せているだと!? バカな! どうなっている!?」
『てめえに答える義理はない』
魔王とばっちり、目が合った。
向こうからルゥザーを見ることなど不可能なはずなのである。
『ルゥザー。悪いが今日で潰させてもらう』
「……調子に乗るなよ、人間! たかが結界を破っただけで!」
ルゥザーは勝ち誇った笑みを浮かべる。
「トラップや部下など、貴様の行く手を阻むものは無数に配備されている。貴様ごときが突破できるほど、この城の守りは薄くないわ!」
『待ってろ。すぐにてめえのところへ行ってやる。覚悟してるんだな』
ジークは普通に歩いて、まっすぐに、ルゥザーの元へ向かう。
砂浜に到着した瞬間、ずぉ……! と地面が沈んでいく。
「第一のトラップ蟻地獄! 踏み入れたら最後! 砂の下に沈む!」
ジークは凄まじいスピードで、砂の中に飲み込まれていった。
「ふはは! 他愛なし!」
『なにがだ?』
バスンッ! と砂が吹き上がると、ジークが下から這い上がってきた。
「ば、バカな!? どうやって!?」
『俺にトラップが通じると思うな。全部仕掛ける前の状態に戻してしまうからな』
ジークは右手を光らせながら言う。
彼の右手は、すべてを元通りにする魔性の手。
『こんなので俺の歩みが止められるわけないだろ』
ルゥザーは、気づいた。
手のひらに、びっしょりと汗が浮かんでいたことを。
「くっ! これで終わりと思うなよ!」
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